第84話 ヒロイン視点
電話を切った私は、急いで出かける準備をする。
時間ないから、今日はジーパンとTシャツで良いや。
本当はちゃんとしたいけど、野崎君お腹空かしてるだろうし。
「まずはお母さんに、野崎君のお姉さんに連絡してもらって……よし」
勝手に冷蔵庫を開けて、料理をして良いか確認のメールを送る。
その間に着替えて、髪をとかす。
そして、それを終えると……好きに使って良いって返事が返ってきた。
あと、馬鹿弟をよろしくとも。
「おばあちゃん! 少し出かけてくる!」
「はいはい、いってらっしゃい。二人は見ておくから、ゆっくり遊んできなさいね」
「ありがとう!」
玄関を出て、自分の自転車に乗って野崎君の家に向かう。
「もう! 全然連絡ないから放っておいたら、ご飯も食べてないなんて……」
こっちは小説書いてるだろうから、邪魔しちゃ悪いなって思ってたのに。
だから、色々と我慢して……むぅ、私が会いたいみたいじゃん。
「いや、そうなんだけど……ずるくない?」
……体のことも心配だけど、ただ会いたいって思っちゃってるし。
十分くらい経ち、野崎君の家に到着する。
ひとまず、ピンポンを押すと……玄関から野崎君が出てくる。
「おっ、早いな」
「い、急いで来たし!」
何やら風呂上がりらしく、濡れ髪にドキッとする。
あ、あれ? 前も見たことあるじゃん! 何を今更ドキってしてるの?
「とりあえず、上がってくれ」
「う、うん」
なんだろ? いつもより、野崎君がかっこよく見える?
というか、余裕がある感じ? ……なんだか、ムカついてきたわね。
ひとまず、それは置いといて……。
家に上がらせてもらった私は、早速調理に取り掛かる。
「お姉さんに連絡して、好きに使って良いって言われたから冷蔵庫開けるねー」
「わかった、好きにしていいから」
私は冷蔵庫を開けて、すぐに作れる物を考える。
「出来れば焼きそばとかだと、すぐに作れるけど……豚バラ、ぶなしめじ、もやし、ニラのネギ、焼きそばの素もあると。よし、これならすぐに作れるね。すぐできるからまっててねー」
「じゃあ、髪を乾かしてくる」
「いってらー」
というか……なに、この新婚さんみたいな感じ!?
いやいや、まだ付き合ってもいないし!
ひとまず気持ちを切り替えて、髪を後ろで結ぶ。
「え、えっと、フライパンはこれね……お皿はこれ良いかな」
まずは豚バラをフライパンに入れて、油を入れずに火にかける。
その間に、ニラやネギを切っていく。
しめじも、じくの部分を除いておく。
「そしたら、火が通った豚バラを一回皿に移して……」
そこにもやしとしめじを入れて、豚バラの脂で炒めていく。
強火である程度炒めたら、ネギとニラを入れて……すぐに麺を追加する。
「そしたら、水を入れてと……」
麺をほぐしつつ、水気を飛ばしていく。
そこに、ソースを入れたら強火にかけて香ばしく仕上げる。
「うん、出来たかな」
皿に移して、青のりと紅生姜を添えたら完成だ。
すると、タイミングよく野崎君が戻ってくる。
「あっ、もう出来たからテーブルに座って」
「あれ? もうできたのか?」
「うん、簡単な焼きそばだし」
「いや、焼きそばすら作れないから助かる」
「それはダメだと思うけど……まあ、良いや。とりあえず、食べちゃって」
野崎君の前に焼きそばを置き、私も対面の椅子に座る。
どうかな? ……美味しく出来たかな?
「いただきます……うまっ!」
「ほ、ほんと? ただの焼きそばだし」
「いや、なんというか……焦げ目があって美味い? あと、油っぽくない」
「ああ、それは最後に強火で焼くように炒めたから。あと、サラダ油とかは使ってないし。豚バラを焼いた時にでた脂で炒めたから。お腹が空いてる時に、油っぽいとアレかなって思って」
「へぇ、すごいな。そんなこと、考えたこともない」
「えへへ、すごいっしょ」
というか、なんだかとっても楽しい。
ラブコメイベントで遊ぶこと以外では、会う機会が作れないと思ってたから。
……これは、野崎君のお姉さんに相談かな。
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