第83話 夏休み……らしくない日々
夏休みに入って数日後……ひたすら小説を書いていた俺に葉月から連絡が入る。
というか、俺の方から電話をして良いのかわからなかった。
俺とは違って、違う意味で忙しいだろうし。
「も、もしもし?」
『へ、平気? 声、疲れてるけど……』
「あ、ああ、平気だ。ちょっと、小説を集中して書きすぎた。近々、コンテストもあるしな」
いわゆるゾーンに入り、朝から昼過ぎまで書き続けてしまった。
本当は良くないが、こういう時は書いた方がいいって体感的にわかってる。
一回休憩したら、もう同じものは書けないとわかっているから。
だから、しんどくても一気に書き上げた方がいい。
「あちゃーお疲れ様です。えっと友達とかの予定と、家族の夏休みの予定が立ったから、一度話し合おうかなって思って。プールの日程とか、花火とか。コミケってやつは、日にちが決まってるけど」
「おっ、そうか。俺の方は暇……ってわけじゃないが、小説関係だけだから葉月に合わせるよ。和也君もバイトで忙しいみたいだから、会うのは数回だし」
…あっ、そういや和也君がくること言ってないや。
俺も色々と余裕がなかったしなぁ。
『そうなんだ。私の方も、みんな結構忙しいらしくて。バイトとか、勉強とか。まあ、もう高校二年生の夏だし、当然といえば当然なんだけど』
「そうだよなぁ……進路とか決めないとだしな。あと、例のバイトに和也君もくることになったから」
『……はい? 佐々木君? いや、聞いてないんだけど?』
……あれ? これって怒られてる?
「す、すまん、ダメだったか?」
『ダ、ダメというか……小説のこと言ったの?』
「ああ、和也君なら平気かなって」
『……ふ、ふーん、そうなんだ』
どういう意味だ? ……全然、分からん。
いかん、ふらふらしてきた。
……そういや、昼飯を食ってなかった。
「えーと……だめだ、頭が回らない」
『ちょっと、平気? ……もしかして、ご飯も食べてないんじゃない?』
「ああ、今気づいたわ」
『ダ、ダメじゃん! そうか、お姉さんがいないから……えっと、今から行くから待ってて! というか材料とかある?」
「へっ? 材料はあると思うけど……悪いし」
『実際に会って話した方が早いし! それじゃあ、また後でね! というか、根掘り葉掘り聞かせなさい!』
そこで通話が切れる……えっ? どういうこと?
「これは、うちに来るということか?」
やばい、頭が回らない。
……とりあえず、昨日風呂に入ってないのはまずい気がする。
そう思った俺は、急いでシャワーを浴びに風呂場にいくのだった。
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