第81話 友達
俺が電話をした相手は、もちろんアキラさんだ。
この時間だったら、多分出てくれるはず。
いつもなら朝ご飯を食べ終えてる時間だし。
「あっ、もしもし?」
『やあ、天馬君』
「今、平気ですか?」
『ああ、問題ない。丁度、朝ご飯を食べ終えたところだ』
「相変わらずですね」
作家さんというのは、不規則な生活を送る人が多いらしい。
アキラさんも例に漏れず、夜明け頃に寝て、昼に起きるという生活を送っている。
『まあ、そう言わないでくれ。これでも、ある意味で規則正しいんだ。それで、葉月ちゃんについてかな? 確か、了承は得たという話は聞いたが……何か、問題があったかな?』
既にアキラさんには、葉月のことは伝えてある。
ちなみに葉月は明日の夏休みから、下読みのバイトもすることになっている。
「いえ、それとは別なんですが……コミケのスタッフって、もう一人雇うことって可能ですか? 実は、友達がお金に困っていて……」
『ふむ……君から友達の話が出るとは。ということは、君のことを知っていると?』
「いえ、まだ言ってません。ただ、教えても良いと思ってる人です」
『なるほど、君がそこまで言うなら安心できそうだ。わかった、人手はいくらあっても良いくらいだ。君の方から誘ってもらって構わない。無論、売り子さんよりは時給が下がるが……』
「ありがとうございます! ええ、それはわかってます」
売り子さんは売り上げ自体に貢献できるから、当然といえば当然だ。
『ただ、警備の意味でも男性陣は欲しい。最低でも日当8000円は出せる思うから、そう伝えて大丈夫だ。あと、下読みの件も良い』
「わかりました! 本当にありがとうございます!」
『いやいや、礼を言うのはこちらだよ。それじゃ、あとはよろしく頼む』
「はい、それでは失礼します」
そこで少し待ってから通話切り、和也君の元に戻る。
そして、ライトノベルと言われる小説を書いていることを伝えると……。
「へぇ! すげえじゃねえか!」
「……やっぱり、良い人だね」
馬鹿にされるとは思ってなかったけど、実際に目にすると実感する。
やっぱり、和也君には伝えて良かった。
「あん?」
「い、いや、なんでもないよ。それで、それに関係する話なんだけど……」
ひとまず、掻い摘んで説明する。
俺の師匠にあたる人に、夏コミでバイトしないかと誘われたと。
あとは、安心できる案件と、雇う際の条件など。
……驚いたのは、夏コミを知っていることだった。
やっぱり、意外とそっち方向に理解がある。
「四時間だから、時給二千円? い、良いのか? あと、下読みのバイトも……それなら、家でも出来るから助かるぜ」
「うん。ちなみに仕事内容は本を売ったり、お金の計算をする仕事だよ。もちろん、かなり重労働だけど。あと、警備の意味合いもあるから」
「なるほど、変な奴もいるかもしれないか……天馬、ありがとよ。小説を書いてるっていう秘密もそうだが……俺のことを考えてくれて嬉しいぜ」
「い、いや……友達だし」
「ははっ! そうだな……うし! 任せとけ!」
なし崩し的に、小説を書いてることを伝えることになったけど……。
これはこれで、良かったかもしれないね。
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