第80話 放課後

学校の校門で和也君と合流して、昼飯を買ってから、和也君の家に行く。


「和也君、改めてありがとうございました。おかげで、補習を受ける必要がなくなったよ」


「やめろやめろ、別に大したことしてねえし。あれはあれで、俺の復習になるから良いんだよ。まあ、とにかくお疲れさん」


そっぽを向きつつも、その表情は緩んでいる。


最近わかってきたけど、和也君はツンデレ男子って感じだ。


……いや、誰得だって話なんだけど。


「うん、お疲れ様。和也君は……確かに成績上がってたね」


「ああ、三十番代に入ってたな。ったく、俺は目立つのは好きじゃないんだが」


ただ、実は……小説を書く上で参考になったりしている。


ぶっきらぼうだけど、実はいい人キャラとか書くときに、和也君をイメージしたり。


アキラさんも言っていたけど、小説家は身近な人をキャラの参考にするみたいだし。


……うーん、そのうち和也君にも小説を書いてることを話してみようかな?


きっと、彼なら馬鹿にはしないだろうし。


「はは……羨ましいなぁ」


「あん? 勉強がか?」


「いや、それもあるけど……俺って自分に自信がないんだよね。一つだけ人に誇れるものはあるけど、基本的にはダメダメだし……せめて、和也君みたいに堂々としたいんだけど」


未だに葉月といると、少しだけ気後れをする自分がいる。


一対一だと感じないけど、人がいるところなんかでは特に。


「自信ねぇ……俺はお前の謙虚な感じのが羨ましいが。あと、見た目とか」


「えっ? そ、そうなの?」


「ああ、怖がられることもないしな。多分、葉月もそうなんじゃねえの? あいつも、人の視線に晒されてきた人間だろうし。普通で良いんだよ、同じ人間だ。あと、俺はお前に遠慮されるとムカつく」


「ごめん……でも、それもそうだね」


今、すっと心に入ってきた。


俺が勝手に引け目を感じると、相手にも悪いってことか。


あと、悩みは人それぞれって当たり前のことも。


「おう。んで、夏休みの予定は決まったのか?」


「まあ、色々と。和也君はバイトかな?」


「そうだな、金が結構やばくてな。正直言って、少し困ってる」


「何かあったの?」


「いや、実はお袋が骨折しちまってよ。まあ、指の一つだから大した怪我じゃなくて良かったんだが……しかし、指を使う仕事だから、少し休むことになった。家にいてくれる代わりに、俺が仕事に出るってわけだ」


「……そうなんだ」


……和也君には、お世話になってる。


「おいおい、暗い顔すんなよ。別にバイトを詰め込めば良いだけだ」


「ちょっと、まってて」


「お、おい?」


俺は一度家から出て、とある人に電話をかけるのだった。



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