第79話 終業式

それから数日が過ぎ……いよいよ、一学期の終業式の日を迎えた。


無事にテストも全部返ってきて、まずまずの成績といったところだ。


これでお盆休みに帰ってくる父さんにも、文句は言われないと……思いたい。


葉月の成績も良くなり、補習を受ける必要もなさそうなので、バイトもできるそうだ。


俺の方もアキラさんに連絡をし、あとは待つだけとなった。





そして、最後に担任の先生の挨拶があり、放課後を迎える。


クラスのみんなが『夏休み何する!?』とか。


『泊まりで遊ぼうぜ!』とか、『彼氏とデートするんだ〜』とか騒いでいる。


去年の俺だったら、こんな会話を聞いてたら嫌な気分になったに違いない。


1人が好きだが、一人でいたいわけじゃないし。


でも……今年は葉月がいる。


あと、和也君って友達もできたし。


本当は、そのことにもっと感謝しないといけない。


……よし、今年の夏は俺なりに色々と頑張っていきますか。


「ねえ? 聞いてる?」


「な、なんだ?」


気がつくと、隣の席の葉月が俺を覗き込んでいた。


「ほら、聞いてないし。今日の放課後はどうするんだっけ?」


「えっと……和也君と遊ぶ約束をしてるかな」


「じゃあ、ちょうど良かったし。私も、今日は桜達と遊んで帰るね。とりあえず、夏休みの予定は明日以降でいい? その、色々とあるじゃない? ……水着買ったりするし」


「ああ、もちろん。そっちはそっちで大切だろうし。そ、そうだな、色々とあるな」


葉月の水着……コスプレよりも、そっちの方がやばい気がする。


というか、俺も水着買わないと。


……いや、その前に筋トレをしよう。


「ふふ、ありがとうね。じゃあ、また連絡する……その、色々と楽しみにしてるから」


「あ、ああ、じゃあな……俺も楽しみにしてる」


「そっかそっか……それじゃ!」


自分の席から、いつもの女子グループと一緒に、教室を出て行く葉月を見送る。


すると……それに付いていこうとする三浦君から、思い切り睨まれる。


……び、ビビるな、俺。


俺だって、葉月のことが好きなんだ。


せめて、目を逸らす事だけはしない。


「チッ……」


「おい、いくぞ」


「わかってるよ」


坂本君に声をかけられ、三浦君も教室から出て行く。


……ほっ、疲れた。


「あれも、どうなんだろ? 特に何もしてこないけど……眼中にないって感じ……ではないかな。最近になって、めちゃくちゃ睨んできたし」


いまいち、考えが読めない。


……まあ、特に気にする必要もないかな。


最後に忘れ物チェックをして、教室を後にするのだった。

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