第68話 風邪イベント発生
ひとまず、財布だけを持って家を出る。
そのまま、スーパーに行って、ポカリスエットや食べやすいゼリー、あとはプリンなどをカゴに入れる。
「あとは何がいる? 薬? 冷えピタとか?」
どうしよう? めちゃくちゃテンパってる。
「いや、よくよく考えたら、ただ風邪ひいただけなんだが……」
こう、居ても立っても居られないというか。
少なくとも、何もしないという選択肢はない。
「……なんだろな、この感じ」
今すぐに顔が見たいとか、心配でたまらないとか。
「というか……俺のせいか?」
最近は俺のラブコメイベントという名目で、色々と付き合わせてしまっている。
葉月は勉強もあるし、家事や弟や妹のお世話もしている。
友達だって多くて、もともと日々忙しくしてたはず。
空いてる日は、バイトだってしてるって話だ。
そこに、俺までプラスされて……無理をさせたのかもしれない。
俺は自分のことしか考えてなくて、相手の事を考えてたか?
自分が楽しいから……こんなんだから、コミュ障って言われるんだ。
「いや、今はそんなことを考えてる場合じゃない」
ささっと買い物を済ませて、俺は葉月の家に向かうのだった。
自転車を漕いで数分後、葉月の家の前に到着する。
「はぁ、はぁ……疲れた」
こちとら、インドアの陰キャである。
体力もないし、外に出ることすら精神を使う……悲しいことに。
「と、とりあえず……ピンポンって押して良いのか?」
鍵はかかってるはずだし、ドアを叩くのもダメだし。
「寝てたら悪いし、起き上がるのも大変か……? いや、まだお昼前だから誰も帰ってこないしだろうし……ピンポンを押してみるか。一回で出なかったら、買った物を玄関の前に置いておいて、連絡だけ入れておけば良いか」
考えがまとまったので、ひとまず玄関の前にいき、ピンポンを押す。
「……出るか? ……よし、帰るか。顔は見たかったが、仕方ない」
すると……足音が聞こえてくる。
そして、玄関のドアが開かれる。
「……野崎君? きてくれたの?」
「すまん、起こした……へっ?」
葉月の姿を見た瞬間、俺の脳が思考停止する。
寝癖のままの髪、少し眠そうな無防備な姿、何より……ピンク色パジャマのままだ。
服が緩いのか、ところどころが見えそうになっている。
暑いのか、一番上のボタンが開いてる……それこそ、おっぱいが溢れそうなくらいだ。
「……野崎くぅん?」
「と、とにかく! 中に入ろう!」
この姿のまま、外にいるわけにはいかない!
俺は葉月を後ろからそっと支えて、家の中に入るのだった。
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