第66話 アキラさんの電話
その後、楽しい食事を終え、家に帰宅する。
「ただいま」
「あら、お帰りなさい」
「ごめん、急に」
「別に良いわよ。由香里さんから連絡は来たし」
「ほんと、何してんだって感じだよ」
「いや、普通だから。お家に行くくらいお世話になってるし、相手のお母さんも心配でしょう。若い男が、小さい女の子や年頃の女の子と仲が良いとか。家とか、その身内とかを知っていると安心するものよ。むしろ、私に感謝してほしいわ」
……言われてみれば、確かにそうだ。
不可抗力とはいえ、お母さんがいない時に家に上がってしまったし。
「……ぐうの音も出ないな」
「その言葉って、日常で使うのね。さすが、小説を書くだけはあるわね」
「ほっといてくれ。とりあえず、頑張ってきたよ」
ご飯は美味しかったし、物凄く楽しかった。
「ええ、由香里さんからも良い弟さんって連絡きたわ。それに、何やらゲームを貸すとか……良いところあるじゃない」
「ま、まあ……ぼっちは辛いし」
「含蓄があるわね」
「それこそ日常で使わないし。というか、ほっといてくれ」
「はいはい」
風呂に入ったら、部屋に戻り小説を書く。
「兄弟仲……なるほど、こう書けば良いのか」
ノートパソコンの前に座り、ファンタジー小説を、今日の出来事を参考に書いていく。
「暖かくなる気持ち……子供を可愛いって思う気持ち……」
それが書き終わったら、ラブコメを書く。
「今日のドキドキ感と、イベントを書けば……」
よし、どんどん書ける。
次々と文字と情景が浮かぶ。
「……ほんと、気にしなくて良いのにな。俺としては、葉月のおかげで書けてるし」
遊園地くらい奢るのは、同然なくらいだ。
そのまま書き続け……。
「……これで、今日のノルマは達成っと」
すると、タイミング良くスマホが鳴る。
「おっ、アキラさんだ……もしもし?」
『やあ、急にすまないね。今、大丈夫かな?』
「はい、大丈夫ですよ。ちょうど今、今日のノルマを終えたところです」
『それなら良かった。いや、そろそろ夏休みに入るかと思ってね』
「ええ、そうですね」
『私の仕事も、少し落ち着いてきた。君にも時間もできるだろうから、今度会おうかと思うんだが……どうだい?』
「ほんとですか!? ぜ、是非!」
アキラさんとは今年の初めから知り合ったが、未だに会ったことはない。
神奈川に住んでいるので遠くはないが、兼業作家さんなのでお忙しい方だし。
『決まりだね。じゃあ、予定は後で決めるとしよう。君のラブコメ話も聞きたいしね』
「はい! 俺の話で良ければ!」
『ふふ、楽しみにしてるよ。それじゃあ、今回は聞かずに、その時に聞くとするかな』
「はい、わかりました」
『それじゃあ、また後日改めて連絡するよ……では失礼』
「失礼します」
少し待ってると……通話が切れる。
アキラさんか……どんな人なんだろ?
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