第51話 テスト期間

葉月の助言と、佐々木君の教えのおかげで、すらすらと問題を解いていく。


そして、お昼休憩となる。


俺はいつものように校舎裏に行き、葉月の弁当を食べる。


「うん、相変わらず美味い」


唐揚げは冷めているのに、さくっとしている。


卵焼きは甘めで、俺好みとなっている。


「ほんと? なら良かった」


「こう……貰ってる身分で偉そうではあるんだが、段々と上手くなってる気がする」


以前から美味しかったが、ここ最近はさらに美味しくなってる気がする。


なんだろ? 俺の舌が、葉月の味付けに慣れてきたとか?


もしくは、葉月が俺の好みに合わせて……いやいや、ないない。


「……えへへ、やったね」


「……おう」


何かよくわからないが、何やらご満悦の様子だ。


その笑顔を見ると、俺も何故か嬉しくなる。


「ところで、どんな感じ?」


「まあ、悪くはないかと」


「こっちも、そんな感じかな。それにしても、暑くなってきたし」


「まあ、今日で六月も終わりだしな」


まだ梅雨明けはしていないが、今日も日差しが出ている。


どうやら今年は雨が少なく、空梅雨の様子みたいだ。


「明日から七月かぁ……早かったなぁ」


「確かに」


五月の中旬以降から知り合ったから、もう一ヶ月半くらいにはなるのか。


まさか、こいつのことを好きになるなんてな。


……当時の俺が聞いたら、信じないだろうな。


「そういえば、夏休みはどうするの? なんか、付き合って欲しいとか言ってたよね?」


「ま、まあ……」


「とりあえず、放課後遊びにいく場所は私が決めておくね。だから、野崎君は夏休みにいくところを考えておいてね」


「……わかった」


じ、自分で考えるのか。


いや、いつまでも葉月に頼りきりじゃあれだしな。


行きたい場所……葉月の浴衣とか、水着姿とか。


……違う違う! それは俺が単純に見たいだけだろ!?


まあ、言えるかわからないが……誘うだけ誘ってみるか。


その後、午後のテストを受け、放課後になる。


「それじゃ、また明日ね」


「おう、また明日」


葉月が鞄を持って、いつものグループのところに行く。


心なしか、いつもより雰囲気が良い気がする。


どうやら、秘密も守ってくれてるみたいだし。


……多分、眼中にないって感じだと思うけど。






それからは、テストに集中し……あっという間に週末の金曜を迎える。


放課後の教室では、葉月が大きく伸びをしている。


……そうすると、とある部分に目が行くのは仕方ないことだと思う。


本人は、気にもとめてないみたいだけど。


「あぁー! 疲れた!」


「お疲れさん」


「あと、一日で終わるねー」


「週明けのテストか……土日で、見直さないと」


俺の苦手科目が、最後の日にある。


ある意味で、勉強する時間があるから助かるけど。


「ずるいし。私は得意科目だから、特にすることないかなー」


「いや、そっちのがいいし。俺も土日自由に使いたい」


「まあ、あれもあるしね」


「そうなんだよ……まあ、こればっかりはなぁ」


流石に、試験期間中に小説を書くわけにはいかない。


貯めておいたストックで、何とか更新しているが……もうやばい。


テスト終わったら、急いで書きだめしないと。


「そうだよー、頑張ってよね。私の楽しみなんだから」


「わかってるよ」


気のせいか、葉月の口調が変わってきた気もする。


緩いというか、気を遣ってない感じというか……よくわからんが。




葉月と別れ、教室を出て、下駄箱に向かうと……。


「よっ、天馬」


「佐々木君……いや、和也君」


「おいおい、早く慣れろって」


「ご、ごめん。というか、昨日の今日だし」


昨日いきなり、名前呼びにしろって言われた。


何とか頑張っているが、ぼっちには中々ハードルが高い。


「まあ、いいけどよ。んじゃ、行くとするか」


「お、お邪魔します」


そう……今日は佐々木の家で勉強をすることになった。


あと、妹さんがお礼言いたいと……だから名前呼びってわけだ。


陰キャぼっちの俺、高校生になって初めて友達の家に行く。


……小説の題名みたいだな。



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