第52話 友達の家

歩いていると、よく知ってる道にやってくる。


というか、最近よく通る道だ。


「あれ? ……この辺って葉月の家の近く?」


「あん? それゃ、そうだろ。俺とあいつは、一応同じ中学だしな」


「そうだったの?」


そんな話は、葉月から聞いてないけど……。


……いやいや、だからなんだって話だよ。


別に俺は、彼氏でもなんでもないし。


「別に仲は良くないからな? クラスも違ったし」


「へぇ……そうなんだ」


「おいおい、そんな顔するんじゃねえよ」


「へっ?」


「まあ、安心しろよ。ほら、もうすぐ着くぜ」


そう言い、俺の前を歩いていく。


……そんな顔ってどんな顔だろう?







そして、とあるアパートの前に到着する。


「ここがうちのアパートだ」


「あっ、ここだったんだ」


たまに通る道なので、見た覚えはある。


これなら、うちの家からも遠くない。


全然歩いていける距離だ。


案内されて、一階にある一室にくる。


外観と内装といい、古いタイプのアパートだ。


「悪いな、色々とボロいだろ?」


「……えっと」


「おい、気を使うなよ」


「まあ、趣があっていいかな」


「ははっ! あんがとよ」


そして、玄関を開けると……玄関前で待っていた人がいる。


「お兄ちゃん! お帰りなさい!」


「おう、帰ったぜ」


「お、お邪魔します」


「いらっしゃいませ! 兄がいつもお世話になってます! 佐々木愛佳っていいます!」


目の前にいるのは、将来確実に美人になるであろう美少女だった。


というか、中学生と言われてもおかしくないくらい大人っぽいな。


「えっと、佐々木……」


「おい、だから言ったろ。佐々木じゃ変だから、名前で呼べって」


女の子を名前呼び……あ、相手は小学生、見た目は大人っぽいけど小学生。


「……愛佳ちゃん、よろしくね」


「はいっ! あっ、兄に代わって本を買ってくれてありがとうございました!」


「い、いえ、こちらこそお世話になっております」


「おい? 色々とおかしいからな? 俺はお世話になってないし……天馬は俺の彼女か?」


「もう! そんなこと言って! せっかく、お兄ちゃんにまともな友達ができたのに!」


「まともってな……まあ、そうかもな。ほら、出かけるんだろ?」


「うん、でかけるよ。えっと野崎さん、何もないですが、ゆっくりしていってくださいね」


「あ、ありがとうございます」


そう言い、靴を履いて玄関から出て行った。


「悪いな、騒がしくて」


「いや、平気だよ。いい妹さんだね。俺には上しかいないから、感覚がわからないけど」


「それは、俺にも言えるな。まあ、とりあえず上がってくれ」


ひとまず玄関を上がると、部屋の中が視界に入る。


入ってすぐにキッチンとトイレ、その近くには洗面所がある。


奥には部屋があって……おそらく、二D.Kのタイプのアパートのようだ。


「まあ、そのコタツに適当に座ってくれ」


「うん、わかった」


ひとまず、手前側に座る。


少し待っていると、和也君が飲み物を持ってきて、反対側に座る。


「さて……じゃあ、早速やるか」


「よろしくお願いします」


きちんと姿勢を正して、お礼を伝える。


なにせ、週明けのテスト勉強に付き合ってくれるのだから。


和也君には、何の得もないのに。


「へっ、律儀な奴だな。だが、葉月じゃなくて良かったのか? あいつも、確か理系科目が得意だったろ?」


「うーん……それも悩みのタネなんだよなぁ」


「どういうことだ?」


「いや、集中できないというか……夏服が」


「あん? ……なるほどな。確かに、アレは凶器だな。前はあんなんじゃなかったが」


どうやら、通じたらしい。


……そういや、男子とこういう会話するって初めてだな。


それよりも、気になることを言ったよね?


「前はあんなんじゃなかった?」


「うん? まあ、時間はあるか……ちょっと待ってろ」


そうして、和也君が持ってきたのは……中学の卒業アルバムだった。

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