第50話 テストが始まる
翌日の朝、いつものように学校に向かっていると……。
「おっはよー!」
「だからいたいって」
背中を葉月に叩かれる。
そして、それを待っている自分がいる。
「まあまあ、いいじゃん。それより、返事がないかな?」
「はいはい、おはようございます」
「うわっ、テキトーだし」
好きと意識した時はしどろもどろになったが……逆に、開き直って落ち着いてきた。
なので、段々とこんな軽い話題にも慣れてきた。
「それより、テストはどうだ?」
「うーん……まあ、平気かな。君が教えてくれたし。そっちはどう?」
「まあ、平気だ。こっちには、佐々木君という強力な支援者がいたからな」
「ずるっ! びっくりだよねー、あの感じで学年順位高いんだから」
うちは学年順位が30位まで出る。
実は前回の時、佐々木は29位に入っていた。
本人は目立つのは嫌だから、もう少し下が良いとか言ってたっけ。
「それだよな。でも、教え方も上手いし」
「私も教えてもらえば良かったなー」
「いや、それは……」
葉月が来ると、佐々木君は来ない。
俺が葉月を好きだと知っているから。
何より……俺自身が、葉月と二人がいい。
「なになに? 初めての友達だから取られたくない?」
「うっさい。まあ、そんなことより……」
「どうしたの?」
「いや、テスト終わったら……すぐに七月だよな」
「うん? そうだけど?」
「そしたら、夏休みなわけで……イベントがあるよな」
「……まあ、いっぱいあるよね」
「もし葉月が時間あるなら、会ってくれると嬉しい」
「へっ? ……どういう意味?」
「そりゃ、もちろん、ラブコメイベントだよ」
「そ、そうだよね! まあ、仕方ないから付き合ってあげる」
「おう、サンキュー」
「じゃあ、とりあえずテストがんばろー」
「そうだな」
「ほら、いこ」
……そういい、腕を組んでくる。
何がとは言わないけど、夏服は反則だと思います……。
その後、テストが始まる。
ちなみに火曜日の今日から始まり、来週の月曜まである。
俺は葉月と佐々木君と勉強したおかげで、問題をスラスラ解いていく。
休憩時間も、隣にいる葉月と話すことなく、次のテストについて頭を巡らせる。
今更、教科書を見直したりはしない。
頭の中で、次の教科の頭に切り替えることだ。
これは、葉月から助言をもらった。
……確か、ファミレスで勉強会をしている時だったな。
うーん……切り替えができん。
「どうしたの?」
いや、おっぱいって乗るんですね。
葉月が前屈みになると、立派なモノがテーブルに乗ります。
……夏服は恐ろしい……そうじゃなくて!
切り替えって、そっちではない……断じて。
「いや、教科の切り替えってやつができなくてな」
一教科やって、また次の教科をやって……気持ちの切り替えが難しい。
「ふーん……小説はどうなの?」
「……なに?」
「いやだって……いくつもの小説を書いてるでしょ?」
……確かに、同時に三作品以上は書いている。
「……そうだな」
「その時って、どうやって切り替えてるの?」
「どうやって……考えたことないが」
いつも、その話の続きを書く前に、なにをしている?
「……頭の中の引き出しを開けてる?」
多分、そんな感じに近い。
「じゃあ、同じようにやったらいいんじゃない?」
「なるほど……ありがとう、葉月。なんとなく、しっくりきたかも」
「そ、そう? まじまじと言われると照れるし……」
「いや、ほんとに助かった」
「ならよかったし。じゃあ、頑張ろうね」
「おう」
……おっぱい、凄かったな。
「いやいや、そうじゃない」
「どうしたの?」
隣の席の葉月が、俺を下から覗き込む。
胸元が少し空いてるので、目のやり場に困る。
「い、いや、少し疲れたみたいだ」
「そう? まあ、次でお昼休みだからがんばろ」
……とりあえず、頭から煩悩を振り払わないと。
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