第46話 交差?
その後……窓の向こうに、とある人達がいるのが視線に入る。
「げっ……」
「どうした?」
「えっと……」
俺がオロオロしている間に、その人物達が店内に入ってくる。
そう……葉月達だ。
「あん? ……ああ、あいつらか」
「ど、どうしよう?」
「どうもしなくて良いんじゃね? 俺といるところ見られるとまずいのか?」
「いや、そういうわけじゃなくて……苦手なんだ、ああいう人達。もちろん、葉月みたいな良い奴もいるから全員ってわけじゃないけど」
どうしても、苦手意識が消えない。
自分でも、良くないことは分かっているのに。
「ふーん、そういうもんか。どうする? 店を出るか?」
「いや、まだ食べ終わってないし……この店は広いから平気かも」
「まあ、大して気にすることもないだろ。まあ、野崎が気になるならチャチャっと食べるとするか」
俺も店を出るため、急いでシェイクを飲むのだった。
◇
……うーん、タイミングが難しいなぁ。
午前中から遊んでだけど、カラオケとかだったし。
マックは騒がしいし……でも、夕方には帰らないといけないし。
……ここで話す方がいいかな。
そう決めた私は、こっそり桜にだけラインを送る。
注文を済ませたら、店の入り口付近の席に座る。
この少し遅い時間だと、奥の方は空いてないみたい。
「この後はどうするー?」
「俺は夕方には帰るよ」
「まじかよ」
良かった、坂本君が帰るなら私も帰りやすい。
「うちらはどうするー?」
「私は、これ食べて少ししたら帰るかな」
「じゃあ、ここでだべって終わりにしようかー」
桜からウインクされる。
いつも私が帰れるように、こうやって締めてくれる。
ほんと、いつも気を使ってもらって悪いなぁ。
ひとまず、食べながら適当に喋って……私がタイミングを見計らっていると。
突然、三浦君と視線が合う。
「ところでよ……野崎と、どうなってんだ?」
「えっと……仲良くしてるかなー」
まさか、三浦君から話題を振ってくるのは思ってなかった。
「ふーん……そうかよ」
「それに関して話があるんだけど……ちょっと本気で好きなんだよね」
私はしっかり三浦君の目を見て伝える。
告白されたわけじゃないけど、振るのも振られるのも辛いから。
万が一、私の勘違いだったら、それならそれでいいし。
「……トイレ行ってくる」
三浦君は、席を立って奥の方に向かっていく。
「……はぁ」
相変わらず、こういうのには慣れない。
でも、きちんと言っておかないといけないよね。
「ふーん、本気なんだ?」
「うん、亜里沙。だから、きっちり伝えなきゃと思って……まあ、自己満足かもしれないけど」
「……私も頑張ってみるかな」
そう言い、亜里沙が微笑む。
以前の、仲が良かった頃みたいに。
もしかしたら、私がのらりくらり躱していたのが気に食わなかったのかも。
「さてと……葉月は帰った方がいいんじゃないかな? あとは、俺たちでやっておくよ」
「そうだね〜。きっと顔も合わせづらいし」
「二人とも……うん、そうするね」
私は荷物を持って、店から出て行く。
……私が落ち込むなんて、三浦君に悪いよね。
◇
……あぶなっ。
そういや、この席はトイレが近かった。
三浦君が席を立って、トイレに行ったが……反対側から行ってくれて助かった。
「どうする? 席を立つか」
「いや、葉月が帰る準備をしてるから動けない」
対面に身長が高い佐々木君がいるから、葉月の席からは見えてないはず。
まあ、別に見つかってもいいけど……何となく、顔を合わせづらい。
あの電話をしてから、少しおかしい。
女子に電話するの初めてだったから、めちゃくちゃ緊張したからか?
その後、葉月が席を立って、店の外に出て行く。
「さて、食べ終わったし、俺達も出るとするか」
「うん、そうし……」
そのとき、真後ろに気配を感じる。
「おい、野崎」
「……どうもです」
振り返ると、何とも言えない表情をした三浦がいた。
「前にいるのは……佐々木? どういう組み合わせだ? カツアゲでもされてんのか?」
「ぁぁ? ……今、なんて言った?」
ま、まずい! どう見ても三浦君はそっち系だし!
佐々木君も、喧嘩っ早いし!
「ま、まあまあ、落ち着いて」
「……違うのか?」
「俺とこいつはダチだ」
「……へっ?」
今、なんて言った?
ダチって何だ? ……ダチ、トモダチ……友達!?
「んだよ、鳩が豆鉄砲を食ったような顔して」
「と、友達だったの?」
「あん? ……俺は、そう思っていたんだが」
「い、いや! 友達だよ!」
そ、そうか! 友達って言って良かったのか!
友達って言わなくてもなれるのか!
……いや、小説とかでも読んでたから、良く良く考えてみたら当たり前なんだけど。
ただ、自分に置き換えることができなかった。
「へっ……そうかよ。んで、お前こそ何のようだ? 俺のダチになんか文句がありそうだな?」
「……別にねえよ。ほんと、こいつの何がいいんだが」
「はい?」
「言っておくが、調子にのるなよ?」
「え、えっと……」
「それはてめーだ。用がないなら、とっとと失せろ」
「ちっ……」
そして、そのまま元の席に戻っていく。
そして、気づく。
長谷川桜さんと坂本君が、俺に対して両手を合わせて謝る仕草をしていることに。
「な、なんだったんだろう?」
「さあな、わからん」
「いや、理由はわかってるんだけど……」
きっと、葉月に関してのことだと思う。
あの時はそんなつもりもなかったし、適当に誤魔化したけど……。
今の俺は、葉月を好きなわけだし……そして、三浦君も。
……よし、勇気を出してみるとしますか。
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