第46話 交差?

その後……窓の向こうに、とある人達がいるのが視線に入る。


「げっ……」


「どうした?」


「えっと……」


俺がオロオロしている間に、その人物達が店内に入ってくる。


そう……葉月達だ。


「あん? ……ああ、あいつらか」


「ど、どうしよう?」


「どうもしなくて良いんじゃね? 俺といるところ見られるとまずいのか?」


「いや、そういうわけじゃなくて……苦手なんだ、ああいう人達。もちろん、葉月みたいな良い奴もいるから全員ってわけじゃないけど」


どうしても、苦手意識が消えない。


自分でも、良くないことは分かっているのに。


「ふーん、そういうもんか。どうする? 店を出るか?」


「いや、まだ食べ終わってないし……この店は広いから平気かも」


「まあ、大して気にすることもないだろ。まあ、野崎が気になるならチャチャっと食べるとするか」


俺も店を出るため、急いでシェイクを飲むのだった。







……うーん、タイミングが難しいなぁ。


午前中から遊んでだけど、カラオケとかだったし。


マックは騒がしいし……でも、夕方には帰らないといけないし。


……ここで話す方がいいかな。


そう決めた私は、こっそり桜にだけラインを送る。


注文を済ませたら、店の入り口付近の席に座る。


この少し遅い時間だと、奥の方は空いてないみたい。


「この後はどうするー?」


「俺は夕方には帰るよ」


「まじかよ」


良かった、坂本君が帰るなら私も帰りやすい。


「うちらはどうするー?」


「私は、これ食べて少ししたら帰るかな」


「じゃあ、ここでだべって終わりにしようかー」


桜からウインクされる。


いつも私が帰れるように、こうやって締めてくれる。


ほんと、いつも気を使ってもらって悪いなぁ。





ひとまず、食べながら適当に喋って……私がタイミングを見計らっていると。


突然、三浦君と視線が合う。


「ところでよ……野崎と、どうなってんだ?」


「えっと……仲良くしてるかなー」


まさか、三浦君から話題を振ってくるのは思ってなかった。


「ふーん……そうかよ」


「それに関して話があるんだけど……ちょっと本気で好きなんだよね」


私はしっかり三浦君の目を見て伝える。


告白されたわけじゃないけど、振るのも振られるのも辛いから。


万が一、私の勘違いだったら、それならそれでいいし。


「……トイレ行ってくる」


三浦君は、席を立って奥の方に向かっていく。


「……はぁ」


相変わらず、こういうのには慣れない。


でも、きちんと言っておかないといけないよね。


「ふーん、本気なんだ?」


「うん、亜里沙。だから、きっちり伝えなきゃと思って……まあ、自己満足かもしれないけど」


「……私も頑張ってみるかな」


そう言い、亜里沙が微笑む。


以前の、仲が良かった頃みたいに。


もしかしたら、私がのらりくらり躱していたのが気に食わなかったのかも。


「さてと……葉月は帰った方がいいんじゃないかな? あとは、俺たちでやっておくよ」


「そうだね〜。きっと顔も合わせづらいし」


「二人とも……うん、そうするね」


私は荷物を持って、店から出て行く。


……私が落ち込むなんて、三浦君に悪いよね。







 ……あぶなっ。


 そういや、この席はトイレが近かった。


 三浦君が席を立って、トイレに行ったが……反対側から行ってくれて助かった。


「どうする? 席を立つか」


「いや、葉月が帰る準備をしてるから動けない」


 対面に身長が高い佐々木君がいるから、葉月の席からは見えてないはず。


 まあ、別に見つかってもいいけど……何となく、顔を合わせづらい。


 あの電話をしてから、少しおかしい。


 女子に電話するの初めてだったから、めちゃくちゃ緊張したからか?






 その後、葉月が席を立って、店の外に出て行く。


「さて、食べ終わったし、俺達も出るとするか」


「うん、そうし……」


 そのとき、真後ろに気配を感じる。


「おい、野崎」


「……どうもです」


 振り返ると、何とも言えない表情をした三浦がいた。


「前にいるのは……佐々木? どういう組み合わせだ? カツアゲでもされてんのか?」


「ぁぁ? ……今、なんて言った?」


 ま、まずい! どう見ても三浦君はそっち系だし!


 佐々木君も、喧嘩っ早いし!


「ま、まあまあ、落ち着いて」


「……違うのか?」


「俺とこいつはダチだ」


「……へっ?」


 今、なんて言った?


 ダチって何だ? ……ダチ、トモダチ……友達!?


「んだよ、鳩が豆鉄砲を食ったような顔して」


「と、友達だったの?」


「あん? ……俺は、そう思っていたんだが」


「い、いや! 友達だよ!」


 そ、そうか! 友達って言って良かったのか!


 友達って言わなくてもなれるのか!


 ……いや、小説とかでも読んでたから、良く良く考えてみたら当たり前なんだけど。


 ただ、自分に置き換えることができなかった。


「へっ……そうかよ。んで、お前こそ何のようだ? 俺のダチになんか文句がありそうだな?」


「……別にねえよ。ほんと、こいつの何がいいんだが」


「はい?」


「言っておくが、調子にのるなよ?」


「え、えっと……」


「それはてめーだ。用がないなら、とっとと失せろ」


「ちっ……」


 そして、そのまま元の席に戻っていく。


 そして、気づく。


 長谷川桜さんと坂本君が、俺に対して両手を合わせて謝る仕草をしていることに。


「な、なんだったんだろう?」


「さあな、わからん」


「いや、理由はわかってるんだけど……」


 きっと、葉月に関してのことだと思う。


 あの時はそんなつもりもなかったし、適当に誤魔化したけど……。


 今の俺は、葉月を好きなわけだし……そして、三浦君も。


 ……よし、勇気を出してみるとしますか。






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