第45話 友達?

 ひとまず、本屋を出たら……。


「んで、どうするよ? お礼は何がいい?」


「えっと……」


 さっきから考えているけど、全然思いつかない。


 その時、俺の目の前にとある建物が目に入る。


「じゃあ、あれでもいいかな?」


「あん? マックでいいのか? 金ならもう少しあるぜ?」


「いや、あそこが良いかな」


「よくわかんねえが、俺に気を使ってるわけじゃないんだな?」


「そういうわけじゃないよ」


「なら良い。んじゃ、行くとするか」


 その後、すぐ近くのマックに移動して……。


「何がいい?」


「お昼は食べてるからて……シェイクとか?」


「わかった。じゃあ、俺が適当に頼むから席を取ってくれ」


「う、うん」


「どうした? きょろきょろして……」


「い、いや、何でもない」


 自慢じゃないが、俺は……マックの中で食べたことはない。


 友達もいないし、一人で食べる勇気もない。


 だから、ここを選んだってわけだ。






 奥の方の空いている席に座り、少し待っていると……。


「おっ、サンキュー」


「う、うん」


 だめだ、こういう時の返しがわからない。


「悪いが、俺は飯を食うぜ」


「別に気にしないでいいよ」


 どうやら、気にしてる様子はない。


 これでよかったのか?


「ほら、お前……野崎も食えよ」


「わ、わかった。ありがとう」


「おう、大したもんじゃないけどな」


 その後、佐々木君は黙々とハンバーガーを食べている。


 これって、なにか話したほうがいいのか?


「佐々木君は妹さんがいるんだっけ?」


「おう、まだ小学生だけどな」


「なるほど。俺には歳の離れた姉さんがいるから、反対だね」


「姉貴か、憧れるな」


「そう? 確かに頼りになるけど……俺は妹か弟が欲しかったかな」


 実を言うと、俺も妹や弟が欲しかった。


 でも、親父や姉貴にそんなことを言えるわけがない。


「そうだよなぁ……まあ、ないものねだりってやつか」


「そういう感じかなぁ」


「やっと口調が砕けてきたな。さっきも言ったが、フランクでいいぞ」


「……わかったよ、なるべくそうする。でも、なんで?」


「俺はあんまり人とつるむのは好きじゃない。お前もそうだろ?」


「まあ、佐々木君とは種類が違うけど」


 俺はぼっちで、彼は一匹狼って感じだ。


「大して変わんねえよ。んで、俺はお前が気に入った。あの啖呵もそうだが、さっきも俺に恐れずに声をかけてきた。俺はこんな見た目だからな、声をかけ辛いのは自覚がある」


「……あれは、葉月が馬鹿にされたから。それと、佐々木君は助けてくれたし。本人が、どう思うかは別として」


「あれはお前が頑張っただけだ。葉月ねぇ……ああ、あの派手な女か。なんだ、惚れてるのか?」


 身を乗り出し、こそっと聞いてくる。


「えっと……まあ、そうだと思う」


「まあ、そうじゃないとああは言えないわな」


「正直言って、まだよくわかってないんだけどね」


「大丈夫だ、俺もよくわかってねえし。というわけで、相談には乗れん」


 意外……確かに怖いけど、背も高いし見た目も良いし。


「モテそうだけど……」


「俺自身が興味ねえんだよ。バイト三昧でそんな暇もないしな。うちには母親しかいないからよ。おっと、気を使うなよ?」


「それなら平気……って言っちゃあれだけど、うちには父親しかいないから」


「……へぇ……お互い、苦労するな」


「まあね。でも、こればっかりは仕方ないかなって」


「……ライン交換するか?」


「へっ? ……い、良いよ」


「んじゃ、決まりだな」


 お互いにスマホを出して、ライン交換をする。


「できたな。おっと、喋ってないで食べないと……」


「あっ、俺も溶けちゃってる」


「おいおい、奢ったんだから勘弁しろよ」


「いやいや、そっちの話が長かったし」


「いや、お前から話題を振ったし」


 ……すごい、普通に話してる。


 それに、男子そのライン交換は初めてだ。


 ……これって、友達ってことでいいのかな?


 うーん……よくわからない。





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