第8話 無事に終わって……ない

結局、その日の学校は無事に終わった。


みんなからこそこそと見られはしたが、絡まれることもなく……。


そもそも、存在を認知されていないからどうしていいかわからないのかも。


あとは、葉月の奴が適当に何か言い訳したのかもしれない。


ひとまず安心した俺は、放課後に違う喫茶店で執筆を始めるのだった。






「ふぅ……書けたな」


不安が消えたからか、今日はスラスラと書けた。


「あとは、もう一つの作品を書きたいが……ん?」


スマホを見ると、そこにはアキラさんからの通知があった。


「しまった、電話きてたのか」


キリがいいので、会計を済ませて店を出る。


そして、自転車を押しながら電話をかける。


「もしもし?」


『やあ、天馬』


「すみません、気づかなくて。喫茶店で執筆してました」


『いやいや、気にしないでいいよ。それはとてもいいことだ。ということは……上手くいったのかな?』


「えっと……バレた件ですよね?」


『それだね。いや、気になって寝れなかったよ』


「相談しておいてすみませんでした。ひとまず、問題はなさそうです」


俺は今日の出来事をかいつまんで説明する。


『ふむふむ、なるほど……そういう流れか』


「流れ?」


『面白い……では、引き続き報告をしてくれたまえ』


「わ、わかりました」


『じゃあ、またね』


「はい、失礼します」


よくわからないが、アキラさんにはわかったらしい。


俺は電話を切り、家路を急ぐ。






家に帰り、家事を済ませたら、姉さんと夕飯を食べる。


「……うん?」


「どうかした?」


「いい顔してるわね?」


「……そうかな?」


「朝はどんよりしてたっていうのに。何かあったの?」


「いや、大したことじゃないよ」


「ふーん……まあ、いいわ」


まあ、一応の懸念材料が消えたからな。


とりあえず、黙っていてくれるらしい。


あとは、たまに感想とかもらえたら御の字だ。


それにしても食ったら眠くなってきた……今日は早く寝よっと。








昼休みを終えて帰ってくると、みんなに質問攻めされる。


「ねえねえ! 何の用だったの?」


「あれだろ? ラブレターとか入れられたんだろ?」


「なるほど、それで人前では可哀想ってことか」


「結局、バレてるけどねー」


……どうしよう?


特に何も考えてなかった。


あの時は夢中になって、思わず声をかけてしまったし。


彼のことをバラすわけにもいかないし……かといって、勝手に振られたことにするのは可哀想だ。


私の都合で話しかけてこうなっちゃったわけだし……。


……そっか! そうすれば全て解決するかも!


「実は、彼に告白をしたの」


「「「「はい?」」」」


「ただ、返事はもらってないから。だから、みんなも放って置いてね」


「へえ?」


「何言ってんだよ!?」


坂本君と三浦君が、何やら慌てている。


……まあ、三浦君はわかるけど。


私のこと狙ってるみたいだし。


イケメンでスタイルもいいけど、私としては興味がない。


ただ、それだけって感じ。


何より、これで誤解が解ける。


「へぇ、そうなんだ?」


よくつるむ亜里沙は、三浦君が好きらしい。


だから、いつも困っていた。


友達と仲が悪くなるのは嫌だし、私としては好きじゃないから困るし。


「どこか良かったの? そんなそぶりなかったけど……」


親友の桜が、少しショックな顔をしている。


あとで、きちんと説明しないと。


「うんと……偶然、彼と街で会う機会があって。その時に、色々と話したんだよね。そっから、気になったというか」


「それだけで?」


「それ以外にもあるけど……恥ずかしいし」


作品が面白いとか、意外と書いてる横顔がかっこよかったとか……。


「か、顔が赤い……」


「まじか……」


あれ? なんか暑くなってきた……?


「そ、そういうわけだから! なるべく放っておいてくれると嬉しいかな!」


それで話を切り、私は机に突っ伏す。


……何これ? どうして、ドキドキしてるの?











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