第2話 放課後
奴らが入ってきたその瞬間から、俺はただの物置と化す。
……静かに、ただ静かにする。
それが陰キャの宿命だ……というわけではないが、俺個人はそうなってしまう。
ああいう人達を見ると、ついつい萎縮してしまう自分がいる。
その後、昼休みを迎え……。
俺は教室を出て、人気のない校舎裏にやってくる。
そこで購買パンを食べながら執筆をするのが日課だ。
と言っても、家ほど集中はできないので主に感想の返事などをする。
あとは、プロットを考えたりとか。
「おっ、今日も来てるな」
投稿して一年、ようやく俺にもファンと呼べる人が出てきた。
なので、感想などもたまにもらえたりする。
「なになに……ふむふむ……まあ、そうだよなぁ」
そこには『面白かったです』などのステキな言葉もあれば、そうじゃないものもある。
「ヒロインが弱いか……または現実味がない」
いや、ファンタジーに現実味を求められても……。
でも、貴重な意見だ。
「多分、女性読者さんの意見なんだろうな」
男性と女性では目線が違うって聞くし。
昨今では、書籍化する際には女性読者を意識した方がいいと、twitterで編集さんや書籍化作家さんが話していたのを聞いたことがある。
「うーん……ファンタジーはまだ妄想でかける分、その辺りは楽なんだよなぁ」
ラブコメの場合は、なまじ現代と一緒の設定なので、逆に書くのが難しい。
「そもそも、ラブコメのイベントがわからん」
当たり前だが、彼女なんかいない……それどころか、女子との接点もない。
体育祭や文化祭、バレンタインなど……思い出したくもない。
その日の授業を終えたら、急いで帰る。
他の学生は教室でだべったり、遊びに行ったり……。
部活動や、アルバイトに精を出してたりする。
そんな中、俺はドトー○に入り、執筆作業に入る。
こういう店はいい。
割と年齢層も高めだし、静かに執筆ができる。
あと環境を変えることで、創作意欲が湧いたりするし。
「よし、やるとしますか」
ノートパソコンをだして、カタカタと文字を入力していく。
今は四時半だから、一時間半は書けるか。
夜は家の用事もあるし、親父との約束で勉強は疎かにできない。
あとは、漫画やアニメ、ゲームや小説などのインプットも必要になる。
そうなると、意外と書ける時間は限られている。
……ふぅ、少し疲れたな。
スマホの時計を見ると、五時半になっていた。
「まだ三十分くらいある……ん?」
何か視線を感じる、あといい香りが……はっ?
「……これ、君が書いてるの?」
「……は、葉月結衣?」
振り返ると、葉月結衣が……俺のパソコンを覗いていた。
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