第7話ここは?

 眼の前にその女性は居た。


 金髪、黄金の瞳。真っ白い肌。およそ、いや生涯出会う事などないと分かる程の存在感。あの静謐さを思い出す。完成された何か。

 手を出してはならない、でも手を出してしまいたいギリギリの禁忌。ゾグゾグと内側から溢れ出てくる…

─────

───

─…



 我慢できずに手を出したんだった俺。


アイキャンフライしたわ。思わずやりました。視たいと思ってしまったんだよ。こんな気持ち初めてだった。今までも心動かされたことはある。


 そんな比じゃなかった。どうしろと?


自分はこんなにも…


 忘れていたのか。擦り減っていたのだろうか?

 日々で誤魔化す感情に何もかも。大人という格好に満足していたんだろうか。


右にならえは安心か。

左にならえは安心か。


 それこそもっと楽に動けていたろ。


思い出せ。私は「俺」でしかない。ワクワクが止まらない。




「あ〜ゴホン。所でなんでここにいる?」

「…」

「え〜と?」

「…おはよう」

「お、おはよう」

俺が挨拶を返すと彼女は満足そうに口を開く。


「まあ、私がここに居るわけだけど、当然の疑問よね。窓の外見てみた? ドアでもいいけど…あ、ちょっと!」

 言われて顔を窓の方に向けた。窓の先には木々が、それの先は森が見える?

 いや、おかしい。俺の住んでいるのは10階の一番上の階で木や草なんてなかったぞ。

 不思議に思いながらも歩いて窓を開けて外に出る。風が全身を。テラスになっていた向こうには確かに森が広がっていた。


 「ここどこ? なんだこれ?」

 「ここは深緑の森。そして貴方の家? でしょ?」

 いつの間にか、彼女はそばに来ていて事も無げに言う。いやたしかにそうなんだけども。


「…ところで、いい加減にそれ隠したら?」

少し頬を赤くした彼女が指を指しながら言う。なんだろう。凄くかわいいと思いながら、指された先を見る。


 熱り立った自分がいた。


 ご無沙汰だった。

 思い返せば、随分と久しぶりの再会だった気がする。元気のなかったお前にはよく会っていたが、こんなにも生き生きとしたお前に会えるなんて。そうか。そうか。今も優しく全身を撫でる風はくすぐったくて、大海原に帆を張る船のマストが如く…


 「こ、こ…は…」

思わず彼女と目を合わす。発した言葉は要領へない。人は焦りすぎると冷静になる。何処か他人事の様に言い訳をしながら、堂々と部屋へ向かった。服を着るために。

 



 



 

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