第6話本当にあった…

 陽の光が部屋を明るくしていた。


 少し肌寒く感じながらも、何か足りない気がして、ぼんやりと目を開けた。無意識に手がそれを引き寄せる。空いた隙間埋めるように、もう少しもう少しと。

 

 落ちて行くように、深みにでも嵌るように。いつにも増して香る、この如何様な形にも吸い付いてくるが如く応えてくる。


 このまま眠りたい。だが俺もあいつもお互い分かっていた。このままじゃいけない。いけないんだ。息苦しさに目を開け、なんとか引き剥がす。


 肺に朝の少し澄んだ空気を入れると、意識が冴えてきた。もう何度か繰り返すと、随分と喉が乾いていたのか身体が水分を欲していた。


 未練がましい思いを引きずりながら、寝室を出て、ダイニングへ向かう。冷蔵庫から水を取り出してコップに注いで一口、二口と飲む。


乾いた大地に染み込む水が如く浸透していく。


ひと心地ついた。珈琲でも淹れようとヤカンに手をのばす。


「おはよう。お湯なら沸いてるわよ」


「お、マジか。サンキュ」


 軽く返事を返して答えてから、何故か目測を誤りヤカンの縁で指先をヤケドした。


「アッつ!…」

「何やってるのよ」


 そりゃ驚きもするだろう。

 なんせ自分の家に見ず知らずの女が居れば。


 剰え堂々と紅茶を呑んでいるのだから。

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