第5話自分の居場所

 ふと目が覚めた。


 部屋は暗かったが窓が開いているのか、月の光が差し込んでいた。どうやら随分と寝ていた様だ。少し熱があるのか緩やかに頬をなでる風が気持ち良い。代り映えしないはずのその部屋でこんな風に思ったのは始めてだ。


  

 そういえば窓やカーテンも締め切って居ることが多かったな。いつ開けただろう?

 必要な時は開けるが、エアコンなんかを使う場合、閉めてしまう。


 文明の力に染まりきった現代人には分かりきった事だろう。昔はなんて嘯いた所で暑いものは暑いし、寒いものは寒い。


 そんな下らない事を思いながら、瞼を閉じる。



 嗚呼、このひと時がとても良い。ふとした瞬間に気付くこの俺を包み込んでくれる優しさ。安心する香り。乱暴にも似た扱いにすらふわりと応えてくれる。時に温かさを、時に冷たさも。


 そんな布団に潜り込む様に抱き寄せる様に俺は眠りについた。

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