遺書(?)
麻井 舞
第1話 遺書(?)
もう分かっています。
カウンセリングも、薬も、酒も、宗教も、自己啓発も、偉人が遺した名言も。
それらの全てが、私には何1つ効きません。響きません。
今日が悲しくても、いつかは笑い話になる。ずっとそう信じて、言い聞かせて、生きてきました。
その言葉は間違ってはいませんでした。
これまで何度も、この世界が地獄のように思えて、まるで未来が閉ざされたような絶望感を味わった日々がありました。
しかし今となっては「どうでもいい」と思えるようになりました。
そういえば、そんなこともあったねー。って(笑)
それの繰り返しです。
辛い、忘れる、笑える、辛い、忘れる、笑える。
ずっと繰り返して、ここまで生きてきました。
疲れました。
私はこの先、何度も何度も繰り返すのでしょうか?
そうやって苦しみを乗り越えて生き続けることが人生なのでしょうか。
だとしたら、私はもう疲れました。
3つの精神疾患を患っています。
10年以上は治療していますが、治る見込みがありません。
今は気分が落ち着いています。
だけど30分後は分かりません。異様に楽しくなって歌っているかもしれないし、毛布にくるまって泣いてるかもしれません。
そういう病気です。
もう分かっています。
カウンセリングも、薬も、お酒も、宗教も、自己啓発も、偉人が遺した名言も。
それらの全てが、私には何1つ効きません。響きません。
もう分かっています。
私が唯一救われる瞬間は、他人から認められた時です。
私は他人が心底、怖いです。だけど狂おしいほど求めています。
他人……人間なんです。私に幸せを与えてくれるのは、いつだって人間でした。
こんなに恐れているくせに。怖くて、怖くて、泣いているくせに。
可愛らしい動物や2次元のキャラ等ではなく、生身の人間に私は救われていました。
人間に傷つけられながら(同様に傷つけながら)、人間を求めていました。
母親に縋る赤子のように。ただただ、愛してほしかったのです。
分かっています。
誰かに愛してほしいなら、先にこちらから愛さなければならない。無償の愛など、無いのだから。
でも、私には出来ませんでした。
「愛」というものが、分かりませんでした。
誰かを上手に愛することが出来ないのです。年を重ねれば重ねるほど難しくなっていきました。
そんな薄情な自分を知られたくなくて、私は「明るくて話しやすい人」を演じました。
あと「優しい人」に憧れていたので、優しい人たちを観察して、彼らの真似事をしていました。
そして家に帰ると一気に疲れて、車の中でしばらく動けなくなりました。
もう本当に疲れました。
嬉しかったり、怒ったり、楽しかったり、悲しかったり、許したり、許されたり……。
「心が動く」ことに疲れました。
ぼんやりと、昔から考えてきました。それは誰にも迷惑をかけずに自殺する方法です。
今年の夏頃、やっと思いつきました。(ここには書きません)
病気で亡くなったおじいちゃん、お母さん。
寿命で亡くなったおばあちゃんたち。
あなた達は善良で働き者で素晴らしい方々でしたから、天国にいるでしょう。
あなた達が繋いできた命を自ら絶つ私は、地獄に行くでしょう。
死後に会えないのが残念で仕方ありません。
残していく家族たち。
あなた達は私の病気に干渉しませんでした。
病名を何度伝えても理解してくれなかった。
本当は病気のことを聞いてほしかったけど、あなた達は私に確かな安らぎを与えてくれました。
あなた達は精神疾患を患った私を一切、責めなかった。病気に関して無知で無関心であるがゆえに、私を「普通」に扱ってくれました。すると私は、まるで自分が「普通の人間」になれた錯覚がして、何だか心地よかったのです。
恩返し、したかった。
もうすぐ冬ですね。
この時期を待っていました。
最後に言っておきます。
私がこんな人間になったのは、誰のせいでもありません。
ぜんぶ私が原因です。
私の弱さのせいです。
私と関わってくれた全ての方々。
本当にありがとうございました。
ありがとう。ありがとう。
嬉しかった。
私が書いた物語を褒めてくれて、ありがとう。
みんな幸せになりますように。
私の大好きな人たちが幸福でありますように。
今日、公園で会った赤ちゃん。お母さんに抱っこされていた赤ちゃん。私の目を見て、ニコって笑ってくれた優しいあの子が、幸せになれる世界でありますように。
ありがとう。
大好きです。
みんなが幸せになりますように。
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