どうしてこうなった?

目の前には青々とした田園風景が広がり山小屋みたいな家が並んで...「ってかファンタジーじゃん!ジブリの山里じゃね?」あれから1ヶ月ローゼリンデと僕は新たに仲間?になったゲームキャラ(モブ)達に名前を付けて農作業に勤しんだ。2週間前に琥珀と珊瑚(と名付けた)に村の運営を託して転移魔法で国内を回って来た。やはりあちこちに人らしき種族が発生して集落というか、群れで集まり生活していた。

鋤鍬や種を与えその脳に直接イメージを送り込む。この国は思っていたより広くて...五国全ての広さより大きい...が、総人口は黄の国より少し多いくらいで...生活の基本を整えるだけの知識を与え物資を与えその場所に魔石を置き転移陣を作る。

ローゼリンデのアイテムボックスから出した元の世界の資材置き場に積んであった石を砂利として出してみたら、あら不思議この世界では魔石となっていた

...解せぬ。見た目はその辺の石っころなのに。そうして国土開拓?勢力拡大?して帰ってきたら...そこは古き良き時代の山里に似た風景が広がっていた。家の形状が若干洋風なのは円華の孫用に木製のプレイハウスがあったからだ。庭にドーンと置くそれは特注の品で組み立て式になっていた。だからアイテムボックスから出せたものの、工具など王子であった僕は使ったこともない。喜栄の記憶でも電動のドライバーをちょっと使った事があるくらいだし、この世界に電気などない。しかしだ!バッテリーに魔力を流してみると充電出来たのだ。異世界チートすげえ。

「よし」気を良くした僕はその早速プレイハウスとは言えないような立派な建物を組み立てたのだ、そして中でマンションドアを出す。まぁ、地面にドアというのは見せられないから丁度良かったのだ。その形を真似て皆がそれぞれの家を作りだした結果が少し洋風の山小屋的な家が立ち並ぶ景観となった。

ローゼリンデのアイテムボックスから鋤や鍬以外にも何やかやと出てきた。早い話が自社株の60%を所有する筆頭株主だった円華。何でも60%までなら指定して出せるらしい。とはいえ...まさかビルとか出てこないだろうな...確か会社の近くと自宅近くにあるスーパーも買い取ってたよな、自分の好きな食材が常に置いてあるスーパーを!とか言って買収していたな...頭がぐるぐるするが考えても無駄であろう。つまりだ、「なんでも有る」の一言になってしまう。

アイテムボックスから何でも出てくる。そして、チート魔法とチートアイテムで見渡す限りを理想的な田舎の村にしてしまった。

その上、長年社長として培った有無を言わせぬ指導力で彼らを使い、それぞれに役を与えチームにする。そして的確な適材適所。皆で協力して作り上げた村と言える集落が形成された。その姿に思わず「社長...」と呟いたらウォーって感じで「「「「シャチョー!!」」」」の合唱が始まってしまった。え?何事...どうやら名前がシャチョーと思われたのか?訂正した方が良いのか?いや面白いなぁ、社長...シャチョー...「シャチョーって」堪えきれずにブッと失笑してしまった。あ、失敗か?

ローゼリンデの方を見やると冷たい視線...そして三歳児とは思えぬ悪い笑顔でフッと笑った。嫌な予感が...

あろうことかローゼリンデは僕を指さして「室長」とハッキリ言った。なんで言葉がはっきりしてるんだ...と思った二秒後「「「「シツチョー!!!」」」」と彼らが叫んだ。

それからローゼリンデはシャチョー神、僕はシツチョー神?として崇められるようになった。どうしてこうなった。

「役職が名前みたいに...て、どこぞの漫才師!?」「いいじゃなーい...プッ...アハハハハハハ...」

「シャチョーって僕も呼ぶのか?僕はローゼリンデにシツチョーって呼ばれるの?それはないんじゃないかな」

「そうよねぇ、うーんとね......じゃあカイ!カイトじゃなくてカイねっ名字みたいだから呼びにくいのよ」そう垣内喜栄という名前は(かきうち きえい)ではなく(かいと きえい)なのであった。かいとが名前のようなので何かと誤解が生じやすかったのでかきうちと名乗っていたが...


「カイ...かぁ、いいね、じゃローゼリンデはローゼ、うーん......リンでどう?」ローゼリンデのままでもとても可愛いがローゼだと薔薇のイメージ、目の前の三歳児はあと十年すれば薔薇...いや十五年か、今は小手鞠程度かな、ちっちゃくて可愛いから

「リン?かわいいねーカイはかっこいい!素敵ぃ」無邪気に笑うその頬は確かに薔薇色だな。そして可愛い。

そう、こいつはすっごい人たらしだった。無意識に褒めまくるからみんな勝手にやる気になって結果を出すから褒める。そして又みんな頑張る、と良い意味のループが生じて...気がついたら会社が大きくなってたと生前の前社長が言ってた。

うーん?そういえば何か...違和感が「あれ。急に言葉がはっきりしてる?」「うん、いっぱい話したから大丈夫になったのよ、だって父上は私を溺愛していたから挨拶以外は何も言わなくても生活出来ていたのよ」ペロリと舌を出して言う。

「あれはあれで可愛かったのに」もう少し堪能したかったと思ったのは内緒にしておこう。


「それでなんでこうなったの?」

2週間前には無かった小さいが神殿のような建物の前で呆然とする。。水源としてあった湖がだ、いつの間にかその湖から流れ出た川の川幅が向こう岸が見えぬ程に広くなっていた。そうして湖も驚くほど大きくなっていて、その湖畔に拝殿のように建物が建っている。その拝殿の横には形はチャペルのような高い建物が二つ...見た事あるような...薬師寺の東塔と西塔のように...しかし違うのは独立してあるのではなくひとつの建物で城のようでもある。異世界で花開く文化の融合?


村と呼べる程度にはなったが村長とか族長とかには興味がない。自分の欲望?いやリンの欲望…のままに米を作り畑を耕し好きな事をしてと思っていたのに、社長からいつの間にか村長どころか神様にされていた。あちこち回ったのだってせっかく魔法で移動出来るのだから拠点を作り村が出来て街になって栄えたら旅行も楽しめるね、程度だったのに。

面白いのは肌の色どころか髪の色から瞳の色にケモミミに妖精のようなとんがった耳に鬼のように角があったり尻尾があったりと本当にバラエティ豊かな人間(前世では人間とは呼ばないのかもしれない)がいた。そしてLGBTというのも無いに等しい。男同士、女同士のカップルは当たり前で一夫多妻制も一妻多夫も極当たり前としてある。日本人だった頃の固まった常識ではちょっとと思っていたが、リンは動物は本来そういうものだとか、子供も皆で育てれば良いなんて大らかなのかいい加減なのか迷うが、まぁ常識なんてそれぞれが正しいと思った事がそうなれば良いのだろう。もともとがリンの魔力で人型となったがその前は妖精に近い魔獣だったりした者だからか日本の倫理観なんて無いに等しい。しかし身体能力は言うにおよばずその能力が異常に高い。そして僕たちに対しての忠誠心が半端ない

それよりもこの建物だ。神扱いされてちょっと躊躇したが仕方ない。

琥珀と珊瑚が恭しくドアを開ける...そこには見覚えのあるドアがあった。日本で最後の時に居た山荘のドアが...リンが小走りに走りだす。

「カイ、山荘のドアだ」「そうだよね、山荘。山荘は出せる大きさではないよね?」「うん、お気に入りだったから早く出したいっておもってた」そんな会話をしながら恐る恐るドアを開けると.........

「「黒江!」」そこには黒江莉佳子があの時のままの姿で寛いでいた。

「あーらシャチョー神にシツチョー神…うふふふ、なんちゃって」

僕とリンよりもコイツが何者なのか、変態の莉佳子がこの世界の何者なのかを知りたい。そして日に何度も繰り返す「どうしてこうなった?」

問うても誰も答えてはくれない。

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