第4話 ◆初めての秘密と惹かれあう心◆
街から帰ってきたおばあさんは、いつものようにラプンツェルに声をかけ、髪を伝って部屋へと戻ってきました。
「今日も変わりはなかったかい?」
おばあさんが、たずねます。
ラプンツェルは、どうしてなのか、今日の若者のことをおばあさんに話せずにいました。
今まで、こんな隠し事なんてしたことなどなかったのに。
「今日は
それは、ラプンツェルの初めて持った"秘密"でした。
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次の日、ユージーンは昨日と同じくらいの時間に、また塔の下に現れました。
二人は塔の上と下で、時間を忘れるほど語り合ったのです。
ラプンツェルはユージーンに外の世界の話をたずねます。
ユージーンは、市場のことなど、自分がお忍びで出かけた時に見聞きした城下の様子を話して聞かせました。
次の日も、その次の日も……そのまた次の日も……。
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そんなふうにして一週間が経とうという頃に、ユージーンはラプンツェルに言いました。
「ねぇ、そろそろ僕が悪い人間じゃないことをわかってくれたかい?」
「ええ、それはお話していてよくわかったわ」
「ああ、ラプンツェル! 君ともっと近くで話せたらいいのに!」
ユージーンは溜息をこぼします。
「それは、わたしだって……」
ラプンツェルも悲しそうに答えます。
実はラプンツェルは、ユージーンのことを、おばあさんに打ち明けようと何度も思ったのです。
けれど最初にしてしまった隠しごと=秘密は積み重なり、いつしか、どんどん大きくなってしまいました。
ユージーンを慕わしく想う気持ちと、おばあさんへの増えるばかりの隠しごと。
そして、外の世界への憧れも。
ラプンツェルは悩んでいました。
でも、ユージーンへの想いが、全てに
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ユージーンは塔の窓から美しい黄金色の髪がおろされて来た時、驚きました。
見上げると、窓からラプンツェルの小さな顔がのぞいて、決心したような声で
「その髪を伝ってのぼってきて」
と言ったのです。
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髪を伝って窓から塔のなかに入っていってユージーンは、やっと間近でラプンツェルを見たのでした。
その黄金色の髪は長く長く床に滝のように美しく流れ、その菫色の瞳はユージーンを見つめてキラキラと輝いていました。
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楽しい時間は、あっという間にすぎてしまいます。
いつもなら、もう帰るはずの時間を過ぎても、ユージーンはラプンツェルの元から立ち去りがたかったのです。
その時、塔の下から
「ラプンツェルや、帰ったよ」
おばあさんの声がしました。
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