第3話 ◆動きだす運命◆
ラプンツェルは知らない人から話しかけられて怯えていました。
でも、それ以上に今まで聞いた事のない若々しい声に興味をひかれていたのです。
『どんな人なのかしら。ここから、ほんの少しだけ顔を見るくらいなら大丈夫よね』
ラプンツェルは窓に近寄って、そーっと顔をのぞかせました。
そして、塔の下に佇み、自分を見つめる若者の姿を目にとめたのです。
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その若者は柔らかそうなミルクティー色の髪をして、その瞳は澄んだ青空と同じ色でした。
「お顔を見せてくださって、ありがとうございます」
礼儀正しく若者は話しかけて、にっこりと微笑みました。
優しい声が問いかけます。
「僕はユージーンと申します」
「せっかくなので、貴女のお名前をお聞かせ願えませんか」
「わたしはラプンツェル……ラプンツェルと申します」
若者は続けて聞きました。
「ここには一人で住んで居られるのですか?」
「いいえ、ここには、おばあさんと一緒に暮らしていますのよ」
「そうでしたか。この
「ありがとうございます。この畑は、おばあさんが丹精こめて作ったものなんですよ。これを収穫して街へ売りに行っているんです」
「ふふっ!それにしても、こうして塔の上と下でお話していては、首が疲れてしまいますね」
若者(王子)……(これからここではユージーンと呼ぶことにいたしましょう)が提案します。
「そこから下へと降りて来られませんか?」
ラプンツェルは驚きました。
この塔を降りて、外の世界へ足を踏み出す?
そんな恐ろしいこと。
おばあさんの話が思い出されます。
「外の世界は恐ろしいところと聞いています。おばあさんからも、くれぐれも外へは出ないようにと、きつく言いつけられているのです」
ユージーンは、たずねます。
「でも、そのおばあさんは畑を耕し、作物を売りに街へと出かけているのでしょう?」
「それは……おばあさんは修行をつんだ魔法使いだからですわ。おばあさんが持っている魔法の鍵がないと、この塔から出ることはできません」
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うーん、とユージーンは考え込みました。
『ラプンツェルというこの美しい娘は、実は高い塔に騙されて閉じ込められているのじゃないだろうか』
そんなことを考えていた時に、森の方向から、はぐれてしまったお供の人たちのユージーンをさがす声が聞こえてきました。
ユージーンは、ラプンツェルに
「また、来ますので、お話していただけますか」
と言って
ラプンツェルから
「……はい」
という返事を貰えると、急いで家臣たちの方へと戻って行きました。
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その後ろ姿を、見送りながら、ラプンツェルの心臓は早鐘のように高鳴っていたのです。
『あの方は、またいらっしゃるっておっしゃってたわ』
『外の世界の話、もっと聞かせてくださるかしら』
後ろ姿が消えていった森の向こうのことを、ラプンツェルは初めて深く考えたのでした。
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そんな時に、ちょうど入れ替わりのように、おばあさんが街から帰ってきました。
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