第2話 ◆思いがけない出会い◆
ラプンツェルは歌うことが好きでした。
おばあさんからの深い愛情を受けながら暮らしていましたけれど、おばあさん以外の人と接することもない毎日は穏やかではありましたが、少々静かすぎる日々でしたから。
最初は窓辺に飛んできた小鳥のさえずりを真似ていたのですが、そのうち、自分の気持ちを言葉にして歌うことを覚えました。
ラプンツェルの声は澄んでよく通り、窓辺の鳥たちのさえずりと合わさって、それはまるで小さな合唱団のようでした。
🌿
そんなある日のこと。
めったに人の来ることの無い森の奥に一人の若者が迷い込んできました。
若者は隣国の第一王子でした。
狩りに出かけた先で森に迷い込み、お供の家臣とはぐれてしまい、その先で、この塔を見つけたのです。
「こんなところに、
王子が辺りを見渡した時、小鳥のさえずりと一緒に歌声が聴こえてきました。
思わず聴き惚れていた王子ですが、はっとして歌声の主を探します。
耳をすませば、その歌は高い塔の上から流れてくるようでした。
勇気を振り絞って王子は塔の下まで行って
「道に迷って、ここまで来たものです。どなたかいらっしゃいませんか?」
と、声をかけてみたのです。
すると歌が止んで、しばらくすると、塔の上の方から怯えるような声で、小さく返答がありました。
「……あなたは、だれ?」
王子は改めて問いかけます。
「わたしは道に迷って森を抜けてきた隣国の者です。塔と
「はい」
震えながら、声の主は答えました。
🌿
ラプンツェルは驚いていました。
おばあさん以外の人の声を聞いたことも、ましてや話しかけられたこともなかったからです。
『どうしよう、どうしよう』
恐ろしさと戸惑いでラプンツェルは泣きそうな気持ちでした。
おばあさんは街へでかけて留守にしています。
🌿
王子は急に驚かせてしまった非礼を詫びたあと、声の主にもう一度、優しく話しかけました。
「もし、許していただけるなら、お顔を見せていただいてお話をすることは叶いませんか?」
しばらく答えがなく、王子が諦めかけた時、塔の上の窓から、そっとのぞく、可憐な色白な顔と黄金色に輝く髪をした乙女の姿が見えたのです。
瞬間、時が止まったような気がしました。
それほどに、その姿は聴いた歌声とともに王子の心を深くとらえたのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます