第9話 ◆悲しみの連鎖◆
なぜならしばらくして、第二王子が王位につくことになったという噂が、今度は流れてきたからです。
そして、ユージーンからの手紙もあれから、ぷっつりと途絶えてしまったのです。
それでもラプンツェルは、ユージーンは必ず生きていると信じていました。
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おばあさんも街へと出かけるたびに隣国の噂を耳にしましたが、それはあまり良くないものばかり……。
王になった第二王子は王太后の
そして、
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ある日のこと。
街へ行ったラプンツェルは隣国の
「ユージーンは、やっぱり生きていたんだわ!」
ラプンツェルとおばあさんはユージーンの無事を喜び、涙を流したのでした。
それでも、すぐには連絡できる状況ではないかもしれない。
今は、静かに待っていよう。
ラプンツェルは自分に言い聞かせました。
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しかし、それから1年経ってもユージーンからの連絡は、ありませんでした。
『ユージーンは、どうしてしまったのだろう。もしかして、わたしのことをもう、忘れてしまったの?』
無事だった、生きていてくれた……その喜びに安堵したあと、今度はそんな不安が押し寄せてきました。
『大変な時なのはわかってる。だけど、一言だけの手紙でも送って貰えたら、それだけで、どんなにか安心できるのに……』
空を見ながら、寂しげに溜息をついているラプンツェル。
おばあさんも、そんな孫娘の気持ちを思い、心を痛めていました。
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そんなある日。
ラプンツェルは食事の用意をして、
「おばあさん、食事ができたわ。 今日は少し肌寒いから、じゃがいもとソーセージのポトフにしてみたのよ」
畑で声をかけたラプンツェルが見たのは、倒れているおばあさんでした。
悲鳴をあげて、ラプンツェルは、おばあさんに駆け寄ります。
「おばあさん!しっかりして!」
呼びかけると、おばあさんは弱々しく目を開けました。
「ああ……ごめんよ……ちょっと……
ラプンツェルに支えられながら塔へと戻ったおばあさんは、ベットに横になると、そのまま寝ついてしまいました。
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懸命に看病するラプンツェル。
しかし、おばあさんの具合は、はかばかしくありません。
食欲もなく、日一日とおばあさんは弱っていきます。
「ラプンツェルや、あたしにもしもの時があったら、この塔を出て、隣国にユージーンを訪ねておいき……」
「嫌よ! そんな悲しいこと言わないで。必ず良くなるから、必ず……」
ラプンツェルは、おばあさんのすっかり細くなった手を握りしめます。
「あたしの愛しい孫娘」
おばあさんは、その手を包むようにしながら途切れ途切れに続けました。
「絶対や必ずは、確かに……ないかも……しれないけれど」
「……お前が愛したユージーンを信じておやり……」
「ラプンツェル……そして……時にどれだけ……運命が残酷……だったとしても……どうか……恐れないで……生き……て……」
それが、最期の言葉でした。
おばあさんは、ラプンツェルに看取られながら、静かに息をひきとりました。
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