第6話 ◆託す想い……外の世界への扉◆
「ラプンツェル、あたしはね、いつか、お前を外の世界へと送り出さなければと思っていたんだよ」
「それでも、やっぱり決心がつかないまま、そして本当のことも言えないまま、ここまできてしまった」
「おばあさん……」
ラプンツェルの目からも涙がポロポロとこぼれ落ちました。
「だから今回のことは良い機会だったのかもしれない」
おばあさんは寂しそうな、でも心を決めたような顔をしていました。
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「ユージーンさん、今度はあんたのことを話してくれるかい?」
ユージーンは、おばあさんの真剣なまなざしを受けて、自分をことを話します。
ラプンツェルと出会ってから、その容姿の美しさもだけれど、素直な心根、優しい気持ち、聡明さに話せば話すほど惹かれていったこと。
そして、これはまだラプンツェルにも話してなかったけれど……実は自分が隣国の第一王子であることも。
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おばあさんは、じっと耳を傾けていたあとで静かに言いました。
「ユージーン王子、いや、ひとりの男性としてのユージーンに聞きたい。外の世界を何も知らない、まだまだ未熟なこの子をこれから守って、寄り添いながら共に生きていく覚悟はあるかい?」
「あんたはまだ若い。それにラプンツェルとも出会って間もない」
「これは一時の感情だけで、出せる答えではないだろう」
「ただね、あたしも年老いてきた。このまま、あたしが死んでしまったら、ラプンツェルは独りぼっちになってしまう」
「だから良ければ、しばらくの間、ここに通ってきてはくれないかい」
ユージーンは真っ直ぐに、おばあさんを見つめながら答えました。
「はい。許していただけるなら、そうさせてください。ラプンツェルのこともおばあさんのことももっと知りたいし、僕のことももっと知って貰いたい」
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おばあさんは今度はラプンツェルへと向き合いました。
「ラプンツェル、下の扉の鍵だよ。これはお前に渡しておこう。魔法なんてかかってないから大丈夫」
「これからはね、この鍵を使って扉を開けて、外の世界に出かけてお行き」
「ありがとう、おばあさん」
涙を拭いてラプンツェルは、鍵🗝を通した金鎖を大切に首にかけました。
ラプンツェルの胸は期待で膨らんでいました。
あれほど憧れ、知りたいと思っていた外の世界。
ユージーンから聞いていた、そこへ行くことができるのです。
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それからユージーンは、ラプンツェルとおばあさんが暮らす塔へと、時間を見つけては足繁く通いました。
塔の扉を叩いて呼びかけると、ラプンツェルが開けてくれます。
もう長い髪を伝って塔の上までのぼることはなくなったので、ラプンツェルは髪を編んでまとめ上げています。
すっきりしたその姿も素敵だ、と思いながらユージーンは、ラプンツェルや時にはおばあさんも一緒に、お茶を飲んだり、手作りの料理をご馳走になったりしました。
実は、おばあさんは読書家で、ラプンツェルも読み書きをおばあさんから習っていたので本が大好きでした。
三人は、ユージーンがお土産で持ってきた本の感想を時を忘れて話しあったりもしたのです。
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度々、
森を抜けて、初めて街へと行った時のラプンツェルの無邪気な驚きと喜び! 市場で見たこともなかった小さな
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そんな楽しい日々が数ヶ月続きました。
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