第137話
しっかり爆睡して晩御飯まで準備してもらっているようだ。
雛菜がワガママを言うので抱えて食堂まで移動する、ダミアナが案内してくれるかと思いきや後ろからじっと見つめるだけで動かない。
「あっちの階段つかったほうが早い」
腕の中で横柄な態度で、指差し案内する雛菜、下着みたいな服装だがそのまま夕飯を食べるのか?
「服装は自由、今は密着していたいから」
どういう理由なんだ。
こんな性格だったっけ、もっと内向的だった気がするんだが。
「もう世間の目なんて気にしなくて良いから。
私たちは家族だけど、恋人にもなれる」
なーに言ってんだ、階段を降りながら必要以上に雛菜を揺らし降りていく。
「あばば、これは不敬、これは不敬」
「いっ、いけませんよ綾人くんー!」
慌てて止めに入るダミアナだが、いつものおふざけだから大丈夫。
「それよりもダミアナ、いつの間にお兄ちゃんと仲良くなってるみたいね……」
雛菜が突然に鋭い目をしてダミアナに話しかける。
さっきまで「あばば」とか言ってたのに何処からそんな落ち着いた声出してるんだか。
「お兄ちゃん!? 綾人くんはペローナ様のご兄弟なんですかー?」
「いやー、前世って言うか? この前まで兄妹だったんだよ」
この前まで兄妹っていうよく分からない日本語だな、けど実際に死んでるし、見た目も同じ身体だけど別物だし。
食堂に入ると昼間に見た面々はもちろん、見たことのない人や天使が入り混じって着席している。
俺たちを待っていたようで、食事はもう配膳済みのよう。
「待たせた」
雛菜が片手を上げて挨拶すると食堂が沸き立つ、格好も下着だし抱っこされているけど、皆からに好かれていることは分かる。
案内された席は、雛菜の横。
一段上がった席で皆の注目を集めるようになってしまっている。
背後には『ようそこ、ペローナ様のお兄さん』と書かれた横断幕が貼られており、非常に恥ずかしい。
「「お帰りなさいまし、お兄さん!!」」
凄い歓待モードで出迎えられてしまった。
練習したのか息ピッタリだよ、これ帰るって言いづらい雰囲気だぞ。
食卓には山盛りのパンと高級そうなシチューやステーキが準備されている。
「遠慮しないで、どんどん食べてくださいね」
プラミシアがサラダなんかを取り分けてくれる、引き攣った笑顔が貼り付いている。
もしかして、俺が誰か知らされないで拉致させられた感じだったか?
だから今になって甲斐甲斐しくお世話しているのかもしれない。
「珍しいわねプラミシア、食事中に立ち上がるなんてー」
それをニヤニヤしながらダミアナが野次る、そういえば「性的に食べちゃうかも」って言われたことをダミアナには言ってたっけ。
野次を受けてプラミシアは冷や汗を滝のように流し、ダミアナを睨みつける。
「プラミシア、もしかしてお兄ちゃんに何かした?」
雛菜も勘がいいから、これだけのやりとりで何か気がついたようだ、目が怖いぞ妹よ。
しどろもどろになっているプラミシアはなんだか可哀想なので、
「いや、向こうを飛び立ったのも宴会の途中だったから。
プラミシアもそれを気に病んで世話を焼いてくれているんだ」
その説明に納得してくれたのか雛菜も頷いて、
「命令を出したのは私、プラミシアも気にする事ない」
その答えに安心したのか、プラミシアも涙目になって感謝の視線を送ってくる。
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