第116話
危うく茹でられるところだった、煮たつ温泉が森の中で大量の蒸気をあげている、地獄の釜ってこんな見た目だろうな。
アドリアネは片足を浸けていたようだが大丈夫なのだろうか。
本人は大溜息をついて川の上流から水を引いて、温泉を冷ます作業をしているから平気そうだが。
なんとか丁度良い温度まで下降した湯、ノエールはアドリアネから接近禁止を命じられて離れた場所で体育座りしている、けど目線ががっつり俺を追いかけているのが懲りてなさそう。
「予想外の足留になってしまいましたね、明日からはペースをあげなくてはなりません」
大木を千切っては投げていたと思えない、その白く細い腕に湯をかけながら今後の予定を見直す。
一度王都へと向かい馬を調達する予定であったが、森の頂点であるドライアドを囲い込めたのでエルフの元へと直行したほうが早いという。
そこら辺はこの世界に詳しい冒険者たちから聞いているので確かな情報だ。
「まさか綾人さんのマッサージに、あのような手が隠されていたとは……」
その話はやめよう、これ以上は倫理に関わるかもしれない。
「ただ先に言っておきますが、あれは私以外には禁止ですからね。
ヘラ様にだって耐えられるかどうか……」
いやドライアドの復活で中断しなければ、自分も耐えれなかったんじゃないの?
一泡吹かせてやりたいと、治療目的ではないマッサージ『回春』を織り交ぜた性感帯マッサージは禁じ手となりました。
普通に生活していたら使う機会なんてなさそうだけれども。
「いえ、あの場に居合わせた者全員が飢えた獣の眼をしていました。
今晩辺りは身辺警護を強化しますね、添い寝です」
それはただの希望なのではないだろうか。
昼食の為に立ち寄った空き地で、夜を迎えることとなってしまったぞ。
時刻はまだ夕方前だが、森の中での移動をこれ以上暗くなってから再開するのは危険と判断したからだ。
それよりも何で全員鼻血を出しているんだよ、風呂を遠巻きに見ていたのは分かるけど古典的過ぎやしないか?
この世界の女性は男に対する耐性が極めて低い、改めて再認識させられる。
どう見ても昼間とは違い、冒険者は俺と接する態度がギクシャクしている。
これは、なんだろう甘酸っぱい反応なのだろうか、意識しだした中学生みたいな反応。
「ノエール、晩御飯作るからまた火の調整頼む」
本格中華でも作るのかってくらいの火力は要らないんだよノエール。
トーラさんもメリダも顔を赤らめて目が合わないし、逆にウカクとカフェカは距離が近い物理的に。
アドリアネのアイアンクローによって宙吊りにされる2人を横目に、妖精の2人は再会からずっと抱きしめ合っている。
感動の再会の余韻なのか、それとも2人はそういった関係なのか?
もしかしてお姉様って呼び方もスール的な、そう考えると体格も違うし顔も似ていない関係性が見えてくる。
個人の趣向をどうのこうの言う趣味はないが。
大変に眼福なので、目の前の童貞ムーブ一同よりも、そちらに意識を割くことにしよう。
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