第76話
sideカフェカ
やってしまった。
あぁ冒険者を護衛に雇ったのが運の尽きか、昔の教え子であるニーサに請われ優先して依頼を回したのが失敗だったのだ。
剣士も魔法使いも要求していた以上の実力を持っていたし、スカウトとして雇ったホビットだって人並みに仕事をこなしていたはずだ、ビショップのみが事態の把握をできていなかっただけのこと。
村に案内され目的の人物にも遭遇できた、結果的には目的は果たされていたのだ、神の遣いをエルフの力でどうこうするなんて思ってもいなかった。
こう言ってしまうと言い訳がましいが、私の目的は友人の発言が本当だったと証明したいが為だった。
長いこと生きてきたが私にはとうとう神の声は聞くことができなかった、それが私の友人はどうだ齢50にして神の掲示を受け取るまでに成長できた。
友として、また友人の女として誇らしかった、最高司教の座を譲るに相応しい人物ではないか。
それがなんだ、やれ身内贔屓の推薦だ、エルフの世襲制じゃないかだ、結果を見て判断しろとあれ程言ったにも関わらず陰での噂は止まらない。
だから、証明したかった。
そして、それは証明されたのだ。
この力は間違いなく神のそれ、または近しいモノを持った使い、それを使役する神命を携える者。
私は遂に巡り会えたのだ、かなり状況としては不味い形となったがな。
魔法使いが衰弱していたのはコレが原因か、はたまた周りを取り囲む竜の魔力に当てられたか。
それにしても先の言種はなんだ、ニーサよ。
片田舎で生まれ育ったエルフのくせに、王国にも代わりの男がいる?どこにこんな男がいるか教えてほしいくらいだ。
王国にいるのは女に支配されきった生っ白い男ばかりではないか、比べてみろ!今私たちの命を救うために抱きつきながら止めてくれているのは誰だ!
線は細いがよく締まった筋肉がついている、極端に太ったり痩せたりしている愛玩動物と化した男にどうやって代わりが務まるものか。
何よりもだ、この料理を食べてもまだ同じ事が言えるか、私は生まれて300年初めて男の手料理というのを今日食べたぞ。
私は感激したよ、今この命を終えても後悔のないくらいに、私の心は打ち震えたさ。
男を奪い取りにきたと思われたくない、私の使命はそんな簡単な物ではないのだ!
神託は本物だった、それならば予言は本当であったのか!?
ならば私の友を救ってくれ!世の中の女を救う存在だったなら、私の唯一無二の友を…。
最高司教トーラは今窮地に立たされている、その座を狙う不届きな輩のせいで命まで狙われているのだ。
私がその座を譲ったばっかりに、私が司教だった頃は怯えて歯向かってもこなかった有象無象に慰み者にされているのだ。
この機会を逃すわけにはいかない、それが例え私の命と引き換えになろうともだ。
だから私は地に頭を擦り付けてでも彼を教会に連れていかねばならない、教え子の前でも関係ないのだ。
「頭を上げてください、大丈夫ですよ会うくらいなら何時でも。」
これが神託なのだろうか、私の頭上から発せられる声は望んでも望んでも聴くことができなかった神の声ではないか!?
地面に縋った私の肩を、そっと優しく担ぎ上げて声の主、神の遣いが諭してくるではないか。
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