第66話
sideアドリアネ
店内には綾人さんのフェロモンが大量の水蒸気に希釈され一つの雲のようになっています、それを特等席で眺めれる幸せを感じています、クラーグの見た目より大きな尻が邪魔ですが。
ええい!何でこの子たち我が物顔でカウンターに座っているんですか、調理中は私の特等席なのに、座るならもっと詰めて並びなさい。
綾人さんに滴る汗は素晴らしいですが、天使たちのぐっしょり濡れた服が肌に纏わりついているのは不快感を煽ります。
いっそ衣を脱いでしまいたいですが、後ろからヘラ様の視線が痛いほどですので無茶はできません。
あっ!今蕎麦の器に綾人さんの汗が落ちたのを確かに見ましたよ!
「綾人殿!それ、その蕎麦を下さい!」
ローズが厨房との仕切りに巨大な乳を乗り上げてリクエストする、なんて目敏い女なんでしょう、一応娘たちが外で頑張っているんだからそっちに行きなさいよ。
次々に身を乗り出して、まるで母鳥に餌をねだる雛のようですが実際は浅ましい欲の塊です。
私は淑女なので争いには参加しません、カウンターの中に入り直接受け取りに行くだけですよ。
ズルズル、うん!美味しい!
マリアはよく理解していない顔をしていましたが、貴方たちそんなに睨まない、これでも私はリーダーなので、親の仇みたな視線は送らないように。
こらルナ、呪詛を吐かない貴方は天使でしょうが。
収集が付かないのでとっておきのお酒を提供して場をおさめるとしましょうか、カウンターにドンっと一升瓶を乗せて各自に配ります。
これも作戦のうちです、酔わせて正常な判断力を奪い今後に繋げます。
「こらこら、流石に昼間からの飲酒は辞めときなさいよ!」
やはりヘラ様とアズサが抑止に動いてきますよね、ここは呑兵衛のローズを焚き付けましょう。
「景気づけですよ、このままじゃ夜まで保ちませんから!
ほらほら綾人さんもグイッと…。」
調理で両手の塞がった綾人さんにお猪口で手ずから呑ませて、ここに間接キスの聖杯が完成しました、そこに新たに酒を注ぎ込めばあら簡単!
カウンターに置けば餌取りの鯉さながらの殺到具合、いやー勿体無いですけど背に腹はかえられません。
背後にいるヘラ様に見られぬよう、反則ギリギリのパワープレイでローズが聖杯を勝ち取ります、どんどん量産しましょう。
止めるヘラ様たちはサリアに妨害してもらいます、
「アズサっち、外が騒がしいよ何かトラブルが起きてるのかも!」
揉め事を納めることに目がないアズサを上手いこと連れ出し、ヘラ様もセットで連れて行きます。
外の騒動も各村の代表と画策した小芝居ですから、騒ぎが大きくなる心配はありません。
この間に店内を酔っ払いで溢れかえさせ、この後の抽選へと漕ぎつけましょう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます