第64話

sideアドリアネ


 マズい所を見られてしまいました、しかも面倒なことにサリアに。

 サリアは可愛い妹分ですが、仕方ありませんね、


「ちょっとまったー!

 なんでナチュラルに始末しようとしてるの姉さん!可愛いアイドル妹分だよ僕!」


 少しあった躊躇する気持ちも無くなりそうです、アイドルとは思ったことがないですよ。


「そもそも、店のアピールの為の催しでしょ、なら少しは公平に見えるよう準備しようよ!」


 サリアの告げ口は高速ですので早めに片付けようと思いましたが、珍しく交渉しようとしているようです、この子も綾人さんの色香に惑わされた哀れな子羊なのですね。

 言い分は、選ばれる枠に天使がもう1人いても良いんじゃないか?ということです。

 なるほど、その上に選ばれるのが『潔白』(笑)のサリアなら公平なイベントに見えると。


「それにアズサを止めなきゃ、このプランは通らないよ。

 アズサを止める事において僕より優れた者はいないと思うけどね!」


 このセールスポイントが1番魅力的です、いまさらサリアの潔白という二つ名がメッキのような飾りなのは周知されていますので。

 アズサ対策は勿論考えていますが、サリアが加わればより盤石なものになるでしょう。


「分かりました、計画自体が潰されるよりはマシでしょう。

 その代わり仕事はキッチリやってくださいね。」


 オッケーと笑う顔は、天使に言うのはなんですが小悪魔と評した方が適切かと。



side アズサ


「くしゅん!!」


「大丈夫?昨日の温泉あがりに私を介抱してて風邪ひいちゃったんじゃない?」


 天使が風邪なんて、ヘラ様は面白いことを言いますね。

 体調を崩すことなんて天使になってから一度もありませんよ、それにしても今日は鼻がムズムズしますね。

 サリアが集団行動をせずフラフラ何処かへ消えてからですので、また面倒なことを引き起こしていなければ良いのですが。


 露店の集中している通りで、私たち一同は只今買い食い中です。

 海の幸も山の幸も、農作物も豊富に取り揃えていて目移りしてしまいますね。

 見た目の割に大食いなクラーグが、両手に食べ物を持って座れそうな場所を探してくれています。

 なかなか丁度いい場所がありませんので、見かねたローズが椅子とテーブルを作り出しますが、あまり人前で力を使うのは感心できません、ただ今回はヘラ様の為ということで目を瞑りましょう。


 机いっぱいに広げられた料理、これが祭りに参加していたら全て無料というのが太っ腹ですね、そもそも、この村に貨幣通貨が流通しているのか疑問ではありますが。

 基本が物々交換で成立しているとローズは語ります、この村に外貨が流入することは殆どないとのこと。

 こんな隠れ里に住んでいるのですから、外部との交流は極々一部に限られているのでしょう、日々の生活はこの村で完結していますし。


 こう料理のレパートリーが多いと悩みますね、食事を必要としない身体ですが、私は食べれる時には食べる主義ですので遠慮なく選ばせてもらいます。

 まずはイカの姿焼きからですね、The屋台物って見た目をしています、噛み切るのに時間がかかるほどの弾力。

 ブリンと串から離れてみせますが断面を見ると見事な分厚さです、これは慣れ親しんでいる地球のイカとは違う種類のようです。

 やはり地球をモデルに作られた世界ですので、生活の節々がよく似ていますが、生息する動植物は細かく観察すると違ってきますね、この味付けはほぼ醤油だと思いますけど。

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