第63話

side サリア


 どうもー、十大天使のアイドル枠である『潔白』のサリアちゃんでーす。

  ローズ母ちゃんがフライングしたのでほぼ一緒に前ノリしたら怒られちゃいました、あと昨日枕投げでハッスルしすぎて怒られてと怒られ担当になっている気もします。

 おかしいですよね?他のみんなとやっている事はそんなに変わらないのに、何故か1番怒られています、逆に言うと1番注目されてるってことですね!

 たまーにアドリアネ姉さんに、


「あなたのポジティブさは極々たまに羨ましくなりますよ。」


 と、褒められるくらいです。


 今回は前回の会議で決まった慰安旅行に来ていますが異世界なんて見慣れているから、ちょっと覗きにくるくらいの気持ちで来てみたのだけど…。

 ヤバい、もうハマっちゃってるかもしれない。

 とにかく料理が美味しい、きっと食材が良いのだろうけど、他の世界に比べても上位に食い込むと思う。


 前回の旅行は大戦の続く世界で、面倒ごとを片付けるのがメインだったから食事もあまり美味しくなかった。

 だから今回の旅行は大満足です、いやーアドリアネ姉さんの担当だったから期待してなかったんですけど本当は。

 姉さんって自分の興味がないジャンルにはとんでもなく無頓着ですから、食事を取らなくても死なない僕らだから優先事項には上がらないんです。


 それにしても、ヘラ様も良い趣味してますよ、あの男の子には何か仕掛けがあると思いますけど皆んなカレの魅力にメロメロって感じです。

 まず見た目が良いですよね、ちょっと前髪が長くて鬱陶しいですけど、割烹着着て髪を纏めたらギャップがあって短所にならないんです。

 身体つきは細いんですけど、不健康なほどは痩せてないんですよね。

 個人的に1番推しているポイントは指ですね、男性的なサイズの手から白くて長い綺麗な指が生えているのが魅惑的です、また料理が上手で頼りになるオーラを感じます。


 そんな訳で自由時間となったんですが、ついつい姉さんと綾人さんの姿を追っかけてしまうんですよね。

 ここが2人で営んでいるお店か、よく言えば歴史のありそうな建物ですね、正直言ってボロっちくて視界に入らない家屋。

 異世界に転生したのに、もっとはしゃいだり金儲けしたりしないんですか、男は貴重な世界なんですから偉そうにしてもおかしくないのに。


 店の前には若い村人がせっせと屋台を準備しています、昨日見た子たちだから顔パスで通れるでしょうけど、それじゃつまらない。

 2人は僕に気づいたら作業を止めてしまうよね、別に案内しなくていいからさ、折角だからドッキリみたいに入店しようかと気配を消して店内を覗くと…。


「聞いちゃったー聞いちゃったー、悪いこと考えますね、アドリアネ姉さん。」


 苦虫を噛み潰したような顔ってこの事を言うんでしょう、


「サリア、貴方いつからそこに居たんですか、それに気配を消すなんて褒められませんね。」


 ご機嫌斜めって言うか誤魔化す気もなさそう、確かに気配遮断して近づいたけど本当にバレないと思ってなかったです。

 話の内容は簡単で、綾人さんの接客を受けるチャンスをジャンケンで決める、という体で実は既に当選者は決まっているという八百長についてだ。

 何時も以上の塩対応ですけど、せっかく面白いことも聞けたので交渉しましょう。


「せっかくのイベントに八百長は良くないんじゃないですか?

 頑張って選ばれようとしているのにー?」


「貴方はまだ綾人さんの本気を見たことがないから言えるのです…。

 あれを前にして、正気を保てるマシな村人を選出することは必要なことです。」


 むむむ、どうやら真面目に考えての行動みたいだ、なら何で負い目がある顔を…。

 あっ!テーブルに置かれている当選者一覧に姉さんの名前があるっ!ズルっ!

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