第62話
出発前に一度風呂に入り身支度してから出る。
着替えを準備して風呂へ向かうと、ゾロゾロと天使がついて来た、まるで日曜日アニメのエンディングみたいに。
この旅館の温泉には男女の区別がない、そりゃ男湯なんて作ったら俺しか使えないから。
自分だけの我儘でアドリアネに迷惑をかけるのは本意ではない、だから俺は皆が入浴する時間を避けて温泉に浸かってきたが、ここにきて俺の入浴時間が被ってしまったか。
裸は昨晩飽きるほど見たのでお互いなんて事ないか、出発の時間も迫ってきているからさっさと入ろう。
暖簾をくぐり脱衣所に入ると、ついてきていたアドリアネがその場で振り返り、入り口に仁王立ちする。
「これ以上先に進み、綾人さんの裸を拝みたいのであれば、私を倒してから行きなさい。」
おぉ、その背中が頼もしいぞ相棒よ。
ここ最近微妙だった評価がここに来て上昇傾向だ。
けど君、この村に来てからというものずっと一緒に風呂入ってたよね?
清々しいほどの棚上げっぷりだけど。
シャワーをさっと浴びて気持ちを切り替える、入り口付近では激しい戦闘音が鳴っているが気にしない気にしない。
フェイスタオルで頭を拭きながら外へ出ると、積み上がった天使の上にアドリアネが腰掛けて待っていた、うちの相棒強すぎませんか?
今日のブースは店の前での出店予定、準備は既に済ませてあるしお手伝いも現地集合だ。
店の内容についてはまだ皆には秘密だ、なんでもアドリアネが発表を任せてほしいと言うので。
なので一旦天使たちとは別行動となる、他の村のブースを巡って食べ歩きするらしい。
今回のゲストは実質ヘラ様と天使のみなので大いに楽しんでいって欲しい。
「にしても、どういう案内を出すかそろそろ教えてくれてもいいんじゃない?
大勢に集まられても捌ききれないしさ。」
店のサイズは相変わらずの大きさだし、詰めて入れても20人弱が限界だ。
「そこですよ、今回は祭りです。
求められているのは店のアピールと、今日だけの特別感。
なので、お客は少数に限りVIP待遇での接客を目指そうかと、集客は抽選形式となります。」
なるほどね、普段から特定の人物しか出入りしていない店だから、宣伝してもらうために先ずは少数からスタートするのね。
でも抽選って言うが、そんなに人が集まるものかね。
店内で挨拶して暖簾を準備しようと再び外へ出ると、もう既に店の前には人だかりができていた。
あれ、もしかして出待ちされていたのか?気の早いお客ばかりだけど、まだ食べ物の用意は済んでないから。
「おはようございます、キキョウ村の祭り代表役です。」
「おはようございます、ボタン村の祭り代表役です。」
あぁ実行委員の挨拶か、祭りの総指揮はアドリアネがとっているものだから挨拶回りに来たのだろう。
「お世話になっております。
アドリアネを呼んできますので少しお待ちください。」
取り巻きの村人全員は入れないので、代表役のみ店内でお待ちいただく。
店内には既にアドリアネがテーブルを準備して待機していた。
「お待ちしていましたよ、それでは…。」
テーブルに肘をついて手を組み、何やら異様な雰囲気を醸し出している。
「紅葉屋入店券争奪ジャンケン大会について説明します!」
なんだ、大した話し合いじゃないわこれ。
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