第61話
各自の部屋を作ったけれど、結局寝たのは食事のとき使った大部屋に布団を並べての雑魚寝。
昨晩の酒が部屋に戻る気力を徐々に奪っていき、何故か俺も大部屋に泊まることになった。
宴会は深夜まで続いて、想像するお淑やかな会ではなく、噂で聞くタチの悪い大学サークルの飲み会のようだ。
アドリアネもそんなに酒には強くないが、他の天使も似たり寄ったりで。
どうみても未成年な見た目の数百歳たちは、まさしく浴びる様に酒を飲み服を脱ぎ散らかしていった。
にしても、あの全裸ラインダンスは壮絶だったな、ツバキ達も配膳を付き合ってくれていたけれど忘れようって顔のしてたもん。
天使の裸踊りは宗教画にも描かれないし、最終的に服を剥かれなかったのは俺とヘラ様だけだったよ。
酔い方もそれぞれだったけど、基本絡み酒の天使が多かった。
ヘラ様は泣き上戸で大半の時間を捕まっていたが、寝落ちするのも一番早かった。
内容は部下が言う事を聞かない、協調性がない、だいたい事後報告ばかりという愚痴が殆どを占めている。
その話の時は全員あらぬ方向に首を曲げて聞き流していたが、その一体感を少しでも仕事に向けてあげよう。
そしてヘラ様が寝息をたて始めた頃から、宴会は最高潮へと進み始める。
まずローズが野球拳をしよう!と進み出て周囲は同調。
知らない間に俺も参加することになっていた点にアドリアネが苦言を呈するが、何故かその時は推しに弱く意見は流されていた。
「やーきゅう、すーるならー…。」
言い忘れていたが、俺はジャンケンが強いのだ。
俺は勝ちに勝ちを重ね、イカサマをしようとした天使を『裁定』の二つ名を持つアズサがとっちめる。
畳に散乱する脱ぎ捨てられた服と下着。
早々に諦めたクラーグ以外は一糸纏わぬ姿でまた呑む、て、おいアドリアネも最後まで参加してるしイカサマも働いて正座させられてるじゃねえか。
そして朝、綺麗に並べられていた布団は散り散りに、空いた酒瓶と徳利ばかり整列していた。
いやー最後の枕投げが一番盛り上がったな、襖を2、3枚ぶち抜いてサリアはアドリアネの横で正座したまま寝落ちしていたけど。
なんで他の天使は俺の布団に潜り込んでいるんだ?皆の就寝は見届けたはずなのに。
そして1番近く、俺の腕の中で寝ているのはアドリアネでした、流石相棒だわコイツ。
起こさないように抜け出すのが大変でした。
朝食の準備をしていると、昨日の惨劇でゲンナリした表情の竜たちが出勤してくる。
分かるよその気持ち、俺も参加してて素面に戻るのが怖かったもの。
お膳の準備が整って片付けに向かうと、天使達は早々に朝風呂を済ませて布団をしまっていた。
ヘラ様が腕組みをして監視しているから、テキパキと作業が進んでいく、これ絶対に説教後だな。
今日の朝食はフレンチトースト、ベーコンエッグ、サラダにオレンジっぽいジュース。
正確にはキキョウの里で栽培していた謎の果樹に実った、オレンジ風の何かだ。
試食したが柑橘系なのは分かるが、酸味が強い柚子っぽい香りのグレープフルーツに近いのか?
まあ美味しいから問題ないだろう。
「うわっ、目が覚める酸っぱさですね!
これ気に入ったのでお土産で下さいよ。」
サリアは気に入ったのか何杯かおかわりして飲み切ってしまった、まだ在庫はあるが絞るのが手間なんだよな。
団子頭を揺らしながらおねだりする姿は可愛いので許すけども。
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