第47話
カレー地獄が終わったら、またカレーを作らされていた。
何を言っているか分からないと思うが、俺も分からない。
朝から、今度は雉みたいな鳥を獲ったからとなんちゃってチキンカレーを作った。
おそらく貴重な鳥なんだろうけど、いいのかカレーで?
どうやら高く取引されるのは羽みたいで、肉にはそんなに価値はないらしい、けどめちゃくちゃ美味いけど?
肉の価値を再発見してもらうため、鳥のタタキも作ってみたけど最後にはカレーに載せられていたので意味がなかったかもしれない。
「鳥のタタキって初めて食べました、藁焼きも燻した香りがして美味しいですね。」
レシピ本を片手に、アドリアネが慰めてくれた、ありがとよ。
最近は必要に追われて料理の勉強をするようになったけど、カレーの魅力には敵わなかったよ。
コイツら部活終わりの男子中学生かってぐらい食うな、多めに作ったつもりだけど綺麗に食べ尽くされた。
それじゃあ次の村へ移動しようかとなった運び、他の村人も何故か付いてくる。
見送りかな?と思ったが違うようだ、完全に餌付けされた雛状態で次の飯を求めているのだった。
「流石にこれだけの人数に、一度に来られると受け入れようがありませんことよ。」
キキョウも少し青ざめた顔でボタンに縋る、さながら蝗害に晒される農家の気持ちだろう。
ボタンはさっと村人達の前に立ちはだかり、任せなと言わんばかりに笑みを浮かべる。
「お前たち、今は我慢しな。
もうしばらくしたら、見たこともない料理を腹一杯食わせてくれる祭りをしてやる!」
祭りについては公開してなかったんだけど、この規模を腹一杯ってどんだけ必要なんだ。
あぁ考えたくない、けれどこの状況を鎮めるには仕方ないか。
ざわつきもおさまって各々が自分の仕事に戻っていった、これは約束を守らねばどんな仕返しが待っているか分からんぞ。
side キキョウ
アタクシの村を見た綾人殿が口にしたのは、
「立派な棚田だな、まさに山村集落って感じ。」
そう、アタクシ達の暮らす村は山と山の間に流れる川を生命線にできていまして。
平地が少ないので、開墾した山を段にして作付け面積を広げているのです。
「おー田舎暮らしって感じだな。
家畜も飼っているけど、食肉って訳でもなさそうだな。」
村で飼育している牛は、もうずいぶんと歳をとって安く譲ってもらったものばかり、余生を水田の耕運などで過ごしてもらっていますの。
山育ちでいつまでも精神的に成長しない、ボタンとは違うんですのよ。
村人の数もボタンの村に比べて多いですが、穏やかな性格の者たちがアタクシについて来てくれた結果です。
「コチラが今年漬けたもので、ここからが去年一昨年と並んでいます。」
特産は肉みたいに派手なものはありません、けどこの村の米と野菜は何処にも負けない自信があります。
いま紹介している伝統の漬物も、この村の名産と言っても過言ではありません。
「これは、奈良漬けだな。
酒粕が使われてるってことは、他の村に卸されている酒の出どころはこの村か。」
おやおや、この漬物の作り方をご存知なのね。
お酒を作るときに出る絞りを利用して、この漬物は作られています、塩はお姉様のところの物ですが。
他の村では受け入れられなかったものの、私の大好物でもあります。
「これなら他の村の食材も利用して、粕漬けを色々提供できそうだな。」
なんですって?
今アタクシの聞き間違いでなければ、肉や魚を粕漬けにすると聞こえましたが…、足が早い魚や肉を漬けるつもりでしょうか?
「いや、そういう料理があるんだよ。
それは野菜みたいに何年も漬け込む物じゃないしな、長くて2、3日寝かせるだけでアルコール、酒精が臭みやら抜いて味を良くしてくれるんだよ。」
試したことはないですが、そんなに上手くいくものでしょうか?
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補足
他の単語と混ざりやすくなってしまったので、キキョウの一人称をカタカナ表記に変更しました。
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