第48話

 どうしても野菜以外の粕漬けを食べてみたい、というキキョウの要望により急遽連泊となった。

 滞在時間が延びてもやる事は増えたわけではないので、憧れの田舎暮らし体験をしてみる事にした。

 食材の漬け込みに2日を要するので、その間キキョウの家に厄介になる。


  1日目。

 ゆっくり寝て起きたら料理が準備されているのは最高だと思う、これぞ旅先って感じ。

 周りの竜は朝っぱらから肉が食いたいと騒ぐが、俺はこの味噌汁と漬物とご飯で満足できる。

 漬物も一種類だけではなく、今日は山葵醬油漬けが出てきた。

 鼻に抜けるツーンとした爽やかな辛味が、次の白米を誘う、俺の大好物になった。


 自由時間は川で魚獲りを体験させてもらう。

 籠罠でも仕掛けるのかと思ったが、衝撃で魚を気絶させるガチンコ漁だった。

 なんて言うか、効率は良いのだろうけどイメージが…。

 獲りすぎないように川に結界を張るのがコツらしいが、参考にならん。

 早々に必要な分の川魚を手に入れたので、川で遊ぶことに。

 さすが渓流、とても冷たくて脚だけ浸けるのが限界だ。

 流れもそこそこあるから、泳ぐなんて無理だった。

 だがそこは竜の本領発揮なのか、真っ裸になって泳ぎ回る少女達。

 森の中の渓流で、泳ぎ回る美少女ってのはなんか神秘的な絵だが、やっていることは泳ぎ対決だからな。


 夕方は獲った魚を囲炉裏で焼いて食べる、炉の中央には根菜を中心としたけんちん汁をつるしている。

 塩でしか味付けしていないが、素材の味だけで勝負できるほと美味しい、お米も一級品だし文句ない。

 夜は縁側に全員で布団を並べて寝る、思い描く最高の夏休みってこういうのだよな!



side アドリアネ


 無防備に肌を露出して天然息子が、と説教したくなる気持ちも勿論あります。

 しかし、今はこの光景を脳裏に焼き付けることに専念しましょう。

 サービス精神旺盛で、ついついアイディアが口をついて出てしまい追加の連休となりましたが、結果オーライ問題無しです。

 魚獲りをして膝まで捲られた格好に、小娘どもはドギマギしているみたいですが、甘いですよ。

 きっと上半身も水に濡れて、シャツが貼り付いて透け乳首まで予想可能ですね。


 案の定、浅瀬の川底の石に躓いて全身びしょ濡れ、ガッツリ見てますよね少しは隠さないのかと。

 こういう時に相棒の私が、そっとバスタオルを肩から掛けてあげるのです、これが淑女たる行動ですよ。

 無言ですがブーイングに似た視線が来ますが、こういう美味しい思いは私だけで十分ですが。


 小娘たちは綾人さんに良いとこ見せたいのか、競争をするみたいです。

 恥ずかしげもなく真っ裸になりましたが、そういう羞恥心の無さが綾人さんに見てもらえない原因ですよ。

 ほら、紳士的に目を逸らして焚き火に集中してらっしゃる。

 アホどもは放っておいて、今後の祭りについて有意義な話し合いをしましょうか。


 夕方には綾人さんの手料理が振る舞われます、正直朝のメニューは綾人さんが関わっていなかったので味気なく感じていました。

 川魚を串に刺して焼いていますが、これ結構グロいですね昔の処刑みたいです。

 この世界で戦争があった時代は、私たちも最終的に駆り出されましたが、人々の考えることはたまに理解不能です。

 その発想力を、もっと綾人さんみたいに別の所で発揮して欲しいものですね。


 

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