第46話
sideボタン
見たことのねえ茶色いものが、真っ白な米にかかっている。
さっきの作る工程を見ているから食べ物だと信じられるが、こいつは…。
先程まで手がつけられないほど興奮しきった者どもが、いざ目の前に料理を出されたらどう動いていいのかと硬直しちまってる。
そういうアタイも、コイツがなんなのか分からなくて睨み合っている。
「おぉ、やっぱりカレーは米がないとならぬのぉ!」
一拍おいてツバキ姉が大声で歓声を上げる、ていうかもう食べ始めてるし。
匙を使って掻き込んで食べている、なるほどそうやって食べるのか。
前にもカレーを食べたことのあると言うモモも躊躇なく食べ進んでいる。
アタイは頭を振って雑念を払う、そうだ今までの綾人殿の料理で不味いものがあっただろうか!
今回は流石に見た目が、ちょっと茶色過ぎるところがあったが、2人の反応を見て確信する絶対に美味いやつだと。
「いや最初はあたくしの炊いた米に何してくれてるかと思いましたが、コレはとっても美味ですわね。」
キキョウはもう食べていた、ちくしょう遅れをとってしまった。
覚悟を決めて、アタイは匙に山盛り乗せたカレーを口に含む。
「うんまあぁぁい!」
なんと複雑な味なんだろう、材料は肉と丸い野菜しか入れていなかったはずなのに。
鼻を抜けるカレーの香りが、どんどん食欲を呼び覚ましていくのを感じる。
side A
いやー、なんとかなったね。
今では、皆が無心でカレーを掻っ込んでいる。
最初は料理の見た目を考えてなかった。
俺には馴染み深い料理でも、たしかに初めての人に出す料理ではなかったかもしれない。
ツバキやモモも最初は戸惑っていた…、いや、そうでもなかったな直ぐ食べていたわ。
「綾人殿、おかわりなのじゃ!」
のじゃロリ娘は今日も元気そうだ。
舐めとったのか綺麗な皿を突き出して、ツバキはお代わりを所望する。
ツバキは気に入った料理だったら迷いなく皿を舐めるからな、はしたないから止めるように言ったが直らない。
にしても速すぎる、毎度のことながら竜は大食いが多いし食べるのが速い、その身体のどこに収めているのか。
どう見ても小学生くらいの見た目なのに、大人も引くほどの大盛りカレーが秒殺だ。
それに呼応するように、他の村人も追加でどんどんと集まってくる。
お代わりの大合唱だ、デモ抗議みたいな団結力と声量だわ。
ミスったな、試食だしそんなに食べると思ってなかったから、量を準備してないぞ。
「待ちな!そんなに詰めよっても、全員分は見ての通りないよ。」
ボタンが前に出て村人を抑制した、流石は村を纏めているだけのことはあると関心する。
「だから、アタイが先にお代わりを食べる権利があるのさ!」
違った、ただの職権濫用だわ。
堂々と言い放ったが、大衆に引き摺り下ろされて揉みくちゃにされている。
村人達との距離が近いと思ってはいたが、あんまり尊敬とかはされてないのかな。
結局また暴動の流れができてしまったので、諦めて第二弾のカレーを作って事なきを得た。
アドリアネがローズさんに追加を頼んでいたので、今頃地球の何処かのスーパーでは玉ねぎが底をついていることだろう。
間接的に母親が尻を拭った形になったわけだ。
ちなみに、この玉ねぎだけカレーは貧乏な我が家の定番料理だった。
具材は少ないけれどスパイスの種類で誤魔化せる、本格的な味を研究したのだ。
「カツカレーも美味かったが、このカレーもまた別の味わいがあるのう。」
ツバキが余計なことを言ったせいで、第三弾はカツカレーを作る羽目になったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます