第45話
あまり寄生虫のこととか分からないから、肉にはとにかく良く火を通しておくのに越したことはないだろう。
異世界で食中毒問題を起こしたら、絶対に地獄を見ることになるのは明らか。
ブロック肉を一口大のサイズに切り分け、これは別に焼を入れておく。
その間に大量の玉ねぎを剥いていく作業だ、これには料理を普段しないツバキとボタンが協力してくれた。
剥いた玉ねぎはアドリアネが不思議な手段で細かく微塵切りにしている、宙に浮かんだ途端に切られているのは便利で羨ましい。
「神聖魔術をこんなことに…、教会に知れたら全員白目剥いて倒れかねんのう。
強大な力を持っておるのに、意外と繊細な作業もこなしよる…。」
なんだか不穏なことをツバキが言っているけど、アドリアネそれ使って大丈夫なやつ?
当の本人は涼しい顔をして、
「馬鹿馬鹿しいですよ、力をどう使おうが強者の勝手です。
バラバラにしたい相手が、今回は偶然にも玉ねぎだっただけのことです。」
台詞だけ聴くと普通に悪役なんだよな、うちの天使って。
とにかく、刻んだ玉ねぎをひたすら大鍋で炒めていく、ちなみにこの大鍋は村から提供していただきました。
立ち込める食欲を誘う香り。
玉ねぎだけでこの効果だから、スパイスを放り込めば村人はもう総立ちだ。
「なんぞ不思議な物を作る男ですな、黒髪ですし何処か異国から攫ってきたのですか?」
「あの料理、色合いはさて置き食欲を唆られる臭いを放っているな。」
オーディエンスも料理の完成を待ち望んでいるみたいだ。
さっきまでは手元よりも、どちらかと言うと料理している俺への視線が痛かったが、今は半々くらいに感じる。
そして、カレーといえば俺は米がないと我慢ならん!
なのでモモとキキョウには炊飯をお願いしている、もちろん米は固めだ!譲れん!
こちらは昔ながらの釜炊きなので、米のプロであるキキョウにお願いした。
「なんであたくしが…。
こんな下女みたいな働きをこの村のために…。」
恨み節を利かせているが、感謝を伝えると手のひらを返して労働していたので安心した。
せっかく美味しい物を作っているんだから、暗い顔は似合わない。
ついでにモモにもアイコンタクトを送ると、キキョウ以上にテンションが上がって薪を追加している。
とにかく、美味しいお米を頼んだぞ。
クミンやらコリアンダーやらで色づいた鍋に、別で炭火焼きしていた肉を投入する。
スパイスの香りに負けないくらいスモーキーな匂いも合わさる、今回のメインは肉だから主張させないとな。
そして煮込む、炊飯が終わり米が蒸し上がるのも込みの時間。
周囲はまるでゾンビ物のパニックホラーだ。
涎を垂らしてジリジリと詰め寄ってくる姿は肉食獣そのもの。
もう殆どが料理の方を見つめている、うんうん、色欲より食欲だな。
当初より計画していた食への意識の誘導は済んだな、断じて行き当たりばったりではないぞ。
「まだか!まだ完成しないのかっ!?」
「腹の虫が鳴り止まぬ、ボタン様後生だから早く食わせてくれえ!」
「うっせえよ、アタイだって我慢してんだ!猟師だったら少しは堪え性を持ちなってんだ。」
暴動Part2が起こってしまう既の所で米の蒸らしが終わったぞ、さあ完成だ!
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