第44話
試食会というか宴会と言いますか、実際に食べてみようと今朝獲れたイノシシに似た獣を、解体するところから見学させてもらう事になった。
いやーパワフルな解体でしたね、正直半分くらい直視に耐えなかったけれども。
血抜きが済んでいなかったら、もっと見れなかったと思うが…。
用意されたのがブロック肉、もうスーパーで並んでいても不思議じゃないくらいまで加工されている。
まな板の上に載っている肉を前に、何を作ろうか悩む。
少し焼いて食べてみたけど、やっぱり豚肉なんかとは違って獣臭さがある、血抜きはちゃんとされているが、現代っ子の俺にはワイルドさが残ってる気がする。
香草をいっぱい使ったカレーだったら誤魔化せるかな?
ていうか、なんで村の皆んなに囲まれて調理しているのだろう。
「おっ、今私が獲ったボアを食べてたぞ!
やっぱ男が食ってくれると違うなー!」
「かあーっ、何だよあの色っぽい格好は。
本当に料理する気あるのかあ?
ひょっとしてアタシたちに食べられたいんじゃないかあ?」
野生動物に囲まれた気分なんだが、見えない結界に守られているが、見えない分ほど安心感がない。
さっきから一挙手一投足に歓声が上がって集中力を欠く、何でこんな事になったんだ。
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こいつら…、こんなに聞き分け悪かったか?大声で怒鳴っても聞きやしない。
ローズ母様の時代から乱暴物が多い村だったが、中でも選りすぐりの者たちがアタイの周りには集まった、モモなんてまさに山の村って感じだ。
そのモモがどうだ、気づけばツバキ姉のとこに戻って、男の前だからってしおらしくするタマじゃないはずなのに。
とにかく手を出すバカはいないけど、ツバキ姉の怒りが立ち込めているのはアタイでも分かる。
そもそも村の総人口は百人にも満たない集落だから、男の存在した経験がない。
アタイも揃って全員が守るあてのない処女のまま、ガタイだけは良くなったものだ。
あっちの村の飯屋でよくしている姿の綾人殿は、やっぱり見慣れていないと刺激が強すぎる。
特に若い奴を中心に、溢れんばかりの父性に当てられて歯止めが効かなくなっている。
「あれがボタン様が見染めた男か、けど周りに居るのって、周りの村の長じゃねえか?」
「なんでも各村の長が共同で娶ったみたいだぞ、あんな別嬪1人の手には持て余すだろう。」
「是非うちらの何人かも一枚噛ませてもらいたいもんだな。」
本当に好き勝手な噂が飛び交う、アタイたちなんて歯牙にもかけられてないよ!
まだ祭りの噂はたっていないが、アタイたちで何か催すことは徐々に浸透してきたみたいだ。
「とりあえず使える食材はわかりました。
試しに作ってみたいので調理できる場所はありますか?」
なんて言い出すから周りの女どもは、ウチでウチでの大合唱が始まって、終いには殴り合う奴らまででる始末。
馬鹿やっているのを見ると、頭が痛くなるな。
ツバキ姉の抱えていた苦悩が分かった気がするわ。
「道具は私が準備しましょう、場所はどこか開けたところがあれば十分です。」
天使が手を叩きこの場をおさめる、だいぶ場慣れしているところを見るに、大人数を鎮める経験が多いのか。
村の中心が祭りにも使われる広さがある、とにかく場所を移動して騒いでいた奴らを途中でとっちめよう。
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