第41話
皆んなで楽しめるイベントを考えよう、それをもって開店セレモニーとしよう。
これが俺の考えられる精一杯の誠意だと思う、それをこの村だけで執り行えば角が立つ、ならば全ての村を巻き込んだお祭りにしてしまおう。
また何処から運ばれてきたかわからないホワイトボードが準備されている、備品が増えるのは構わないが店の景観を損ねないのか?
「異次元ポケットは完備してますのでご心配なく。
我々の目的達成の為なら、手段を厭わない方針ですので!」
親指をぐっと突き出し、アドリアネは何故か良い笑顔をしている。
これで良いのか異世界の生活!?もっと質素倹約な生活を営むべきではないのか。
「私の考えは、清貧は経験であって不必要に継続するものではないと。
必要な物を準備するのが相棒の役目ですから。」
俺の考えを見透かした(手を握られているので本当の意味で)アドリアネはそう語る、確かにいつも助かっています。
それにしても祭りか、俺の貧しい想像力では地元でやっていた小さな祭りくらいしか思い浮かばない。
神社の境内に向かって屋台が数件並ぶ程度の祭りだったが、それでも妹は楽しんでいたな。
お金もなくて、パックに入った焼きそばを2人で分けあって食べていたんだ。
たぶんキャラクターの絵柄が入った綿飴とか欲しかったろうに、結構我慢させていたのかも。
そういや元気にしてんのかな、今度現世にいるローズさんにでも尋ねてみようかな。
sideアドリアネ
これは難題にぶつかりましたよ、各村を巻き込んだお祭りですか。
各村にはそれぞれの主義主張があるように、持ち味となる物もバラバラです。
ツバキの村は海産物。
ボタンの村は山の幸。
キキョウの村は穀物を中心とした農耕を。
こう見るといっそバラバラに執り行った方が楽なのではないだろうか、いやいや綾人さんの意向を無碍にはできない。
それにヘラ様が予約を勝手に取り付けてきた件もある、あまりにも無惨な様を観測されては担当交代なんて判断を下されるかも。
この祭りをなんとか成功させて、もっと手広く商いをして綾人さんとの絆を見せつけねば!
そういえば、ヘラ様の誕生日が近かった気がする。
唯一神と崇められるヘラ様の威光はこの村にも届いていたはず、ここは生誕祭と収穫祭をミックスした新しい祭りにしては?
旬のものを食べれる店を募って、メインイベントとして接客を体験できるコーナーを特設。
うんうん、なかなか良いのではないか。
男日照りが常のこの世で、オアシスが近くにある幸せを実感してもらうのは目的に則っている。
またナイスアイデアを思いついてしまった、これは綾人さんに褒められてしまうな。
ホワイトボードにまとめた案を解説していると、
「えっ、ヘラ様が来るなんて聞いてないんだが…。
そういう大事な事はもっと早く言ってくれないと。」
しまった!私としたことが大切な事を伝えていなかったのだ。
私にとっては同窓会や会社の飲み会に近いものだったので軽く見ていたが、綾人さんにとっては生まれ変わりを指揮した恩人でした。
案は採用されましたが、この失点をどう取り返すかが今後の悩みになりそうです。
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