第26話
「コンセプト喫茶をやりましょう。」
テーブルに手を突きアドリアネは語り出す。
所謂コンカフェ、分かりやすく言うならメイド喫茶のようなテーマを主軸としたカフェのこと。
ホストクラブとコンカフェ、接客業という意味では同じだが客層は違うのでは?
「こんせぷとかふぇ?なるものですが、このボロ屋でできるものなのでしょうか?」
リツと名乗った姉の竜人は、挙手しながら尋ねる。
「よくぞ聞いてくれました。
このボロボロの家屋に意味を持たせるためのテーマがあります。
見ての通りの食堂ですが、未亡人の若男将(わかおかみ)が切り盛りする設定だと?
男手ひとつでやりくりする姿、これだけで白米がすすむこと間違いなし!」
俺はポカーンとしていたが、竜人姉妹は食い入る様にアドリアネを見つめ頷く。
もしかして、意外とウケているのか?
「という訳で、綾人さんはこの割烹着に着替えてください。」
何処から取り出したのか、アドリアネは純白の割烹着セットをテーブルの上に乗せる。
家屋も日本はだから割烹着なのか、腕を通すエプロンだな。
言われるがままに袖を通して立ってみる。
アドリアネは無言で頷き、リツとレンは口を手で覆い隠し騒ぎ立てる。
男の割烹着がそんなにいいのか?裸エプロンみたいな感じか。
「完璧です、これなら出す料理が質素な物でも苦情は出ないでしょう。
どうですか、この手腕!」
手腕というよりも、性癖を前面に押し出しただけな気もする。
けどこのコンセプトなら、キャストが自分1人でもなんとか回るかも。
そういう意味では、ちゃんと考えられた案なのかも。
「試しにリツとレンを使って、接客の練習をしてみましょう。
設定はそうですね、狩で妻に先立たれた未亡人の若男将がベターですかね。」
そんなシチュエーションが受け入れられるのか、てかいきなり未亡人の気持ちになりきれるか!
side レン
厳正な勝負の末に、お姉ちゃんが先に入店することになった。
まさか妹の関節をキメてまで権利を主張するとは、まぁ私も本気で蹴り飛ばしたけど。
なのでお互いにボロボロになっての挑戦になる。
そう、これは挑戦。
言い換えるなら試験なのだ、これにクリアしなくては今後兄貴の側で働けない。
あの格好は反則だと思う。
何に使う衣装なのか分からないけど、アレを着た時の衝撃は分かる。
あの溢れ出す父性、雄であることを辞めた覚悟のなかに見える色気。
思い出しただけで身震いする、同時に涎が出てきた。
お姉ちゃんが何分保つか、あれで意外と根性あるから、なんとか反応で情報を得られれば良い。
「ふぉぉぉ!」
黄色い悲鳴が店内から漏れ出る、あちゃー参考にならない。
耳を澄ませてみるが、猿叫しか聞こえてこない。
「ああ…!り…ぃ……いぃ!があ…あぁぁとぉ…おおう…ぅううご…ぉ…ぉぉざああぁあっ!いぃ!まぁ…あ…!す……う…!」
死霊系の魔物になったのか、叫びの果てに這いずるように店から出てくる姉。
消費した体力の割には、元気そうな顔をしている。
こうなってしまうのか…、もう興味よりも恐怖が強く戦慄する。
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