第23話

 自分の身体が自分じゃなかった!

 夢だけど夢じゃなかった!

 衝撃の事実が発覚したが考えるのをやめた。

 最初に約束されていた、身体強化と思っておくとする。

 言語能力だって自然と身についていたし、もう驚かない何故ならファンタジー世界だから。

 アドリアネのことだし、まだまだ隠していることはありそうだ。

 この場所で問い正しても、把握しきれないと思うので今は放置しよう。


「とりあえず名前はどうしますか?

 綾人のモミモミ屋とかって、良くないですか?」


 アドリアネが絶望的なセンスを発揮してくる、嫌だよ。

 突然思いつかないけど、この名前よりはマシな物をつける自信はある。

 モミモミ屋ってなんだよ、モミモミか…、そうだ、紅葉なんて入っていたら良いんじゃないか?

 ツバキだったりローズだったり植物に縁のある名前も多いし。


 紅葉屋にしよう!決定!


 そう決めると、どんどんイメージが固まってくる。

 そもそも考えていたのもあるが、マッサージのサービス内容なんかも、この世界風に変更する必要がある。


「名前は決定でも良いでしょう。モミモミ屋も捨て難いですがね。

 店は表向き、ホストクラブとして経営していきます。」


 俺のイメージが音を立てて崩壊していく、

 why?

 確かにホストクラブで働いていたことはあるが、あくまでも雇われる立場でだ。

 経営の分野に関わったこともないし。

 俺が思い描いていたのは、マッサージ屋なんだよな。


「さきほど映像で流したホストクラブへの食いつき様を思い出してください。

 この世界の女性を幸せにする近道ではありませんか!

 と言うのは建前で、本当のことを言うと綾人さんのマッサージは一般人には危険かもしれないからです。」



sideアドリアネ


 絶望する表情も、これはこれで好きなひとがいるでしょうね。

 もちろん私も好きなんですけど。

 夢が目前で儚く消える、なんとも言えぬ感情を湧き上がらせる表情。


 無論、意地悪で言っているのではなく。

 綾人さんのマッサージは、世間に流布するには危険な要素が多いのです。

 複数の効果を内包するマッサージは、真の神話級の身技です。

 悪しき心の持ち主が、必ず現れて邪魔してくるはず。

 それにローズが羨ましかったというのも少しだけありますが、私は綾人さんに接客されるので、私の勝ちです。

 これは悪心ではありません、相棒特権ですので勘違いなきよう。


 ローズの映像効果もあり、村人も同じような店を期待するはず。


 マッサージを受ける対象は、私が選別しましょう。

 まず最初に、竜人の姉妹はダメです、なんやかんやヤツらの行動が騒動の原因ですから。


 マッサージコースはVIP限定で、とりあえず他の天使でも招待して宣伝しますか。

 今回のパートナー選別戦で、やり過ぎてしまった感も残ってしまいました。

 謝罪の意味も込めて、実験といきましょう。


 まるっと説明すると、理解はしたが納得していない顔。

 これは姉としての保護欲を掻き立てられる、新しい表情。

 駄々をこねる弟もまた良し。


 相棒であり、弟であり、ビジネスパートナーでもある。

 要素てんこ盛りのヒロインかっての!

 なんて役徳。


 あぁ、実力でパートナーの座を勝ち取って良かったー!

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