第19話
sideアドリアネ
嘆かわしい、大股をかっ開いて失禁する知り合いの娘。
気絶する前に魔術で粗相くらい防げたでしょうに、まさかマッサージで失神するとは夢にも思わなかったようですね。
私ならこんな醜態は晒しません。
浜辺でのマッサージも、先っちょしか出てませんのでバレてませんし。
窓から見える夜空が、もう少しだけ白んできました。
夜通しのアクシデントとなってしまいました、私はマッサージで全回復していますが綾人さんはそうもいきません。
今日はいろいろあってお疲れでしょうし、私の膝枕で癒してあげましょう。
なんで嫌がるんですか?いい年して恥ずかしいですか。
逆に大人には膝枕が必要な日もあるんです、大人しくしなさい。
半ば無理やり膝に押さえ込み、寝かせつける。
サラサラの黒髪が、浴衣からはみ出た太ももに当たって、少し擽ったいです。
髪を撫でながら、朝日が登ってくるのを待つ。
綾人さんは疲れていたのか、もう寝息が聞こえてくる。
これは目覚めてくるまでは静かにしていないと、村人には綾人さんが目覚めるまで固まっていてもらいましょう…。
side リツ
夜が明けて、朝一番に兄貴を迎えに行く。
流石に竜姫様も病床に耽ってるから、朝まで男を貪るとは思えないし。
朝の弱いレンを起こして、私たちは館へ向かう。
その道中はまさに地獄の様相を呈していた。
道には死屍累々たる有様、倒れている者から立っている者までが皆固まって動かない。
この光景は想像がつく、あの翼人に逃げられ取り押さえられたのか。
にしても村人のほぼ全員を拘束している、おそらくは襲いくる者のみを選んでいるにしろ凄い人数だ。
私たちは翼人の実力を見誤っていたようだ、村人のほとんどが一定の実力を持っていたのに。
もしや姫様の身にも危険が及んでいるかも、いや村がこの有様だ確実に館に向かっている。
館の入り口には一段と強固な結界が用意されているが、不安が拭い去られることはない。
館はこじ開けられていた、言葉通り扉は異様な変形をしていた。
固く閉ざされた物体を、力のみで引き絞ったらこんな形になるだろう。
どんな力だったら結界で守られたものを、ここまで歪めることができるのか。
姉妹揃って顔を青ざめ、中央の間へと走り出す。
私たち2人はとんでもない化け物を懐へと呼び込んでしまったのかもしれない。
中央の間の扉は、予想した通り破壊されていた。
割れたドアの淵から中を覗き見るが、手前には人影はない。
意を決して中へ飛び込むと、そこには純白の翼を広げ、優しく男を包む翼人がいた。
いや、もう私は気づいていた。
あれは翼人なんかではない、神話の登場人物である天使だ。
この宗教画のような光景が、何よりの証拠だと思う。
天使は我々の存在に気づいた、気づいていて歯牙にも掛けず兄貴の黒髪を撫でている。
その時にはもう、私たちは動けぬ術にかけられており、ただ気持ちよさそうに寝ている兄貴が起きるのを待つしかなかった。
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