第18話


「そもそも医者ではない前提で、こんな症状は見たことないんだけど。

アドリアネは、何か分かるかな?」


 状況がひと段落したので、当初の目的へと戻って質問する。

 患部は周りの皮膚よりも、明らかに硬化が始まっており、中心に近づくほどに体温も低下している。


「私も医学の知見は乏しいですが。

魔素の循環を見る限り、おそらくは大丈夫でしょう。

それはこの女も、既に理解していると思います。」


 知らない単語が出てきた。

 どうもアドリアネには魔力の源流たる、魔素というエネルギーが視認できるらしい。

 魔素は普通の人に見えるものではなく、魔法を扱うものの中でも極まった能力がなければならない。

 浴衣から溢れんばかりの巨乳をはり、ドヤ顔で自慢する。

 褒めて欲しそうなので頭を撫でると、嬉しそうに目を細めるのが、どことなく大型犬を彷彿とさせる。


「確かに、先ほど触れられた部分から体温が戻りつつあるのう。」


 見たところ黒く変色していた部分に、ハッキリと手形状に跡が残っていた。


「私もマッサージを受けた後に気がつきましたが。

 綾人さんの触れた後、施術後の数時間は魔力がチャージされているようです。

 ヒールなどの魔法では、他者に魔力を付与することは不可能ですので、この能力は唯一無二の力ですね。」


 自分にも効果があったのか、自身の肩をグルグルと回しながらアドリアネは説明した。


「他にも一定時間のバフ(強化付与)がありますね、自然治癒力カバー、魔力総量の増加、基礎体術の向上etc…。」


 特に魔力総量の増加は、一定時間の魔力チャージと相性が良いらしい。

 ツバキの症状は、自己回復の範囲で治るものではなかったみたいで。

 総量が増えたところに、プラスされた魔力が補填され、ようやく回復が始まった。


「他者に魔力を分ける?

そんな能力聞いたことがない、魔力とは個人の中で循環し完結しているものだろう。」


 ツバキは自分の患部と俺の顔を交互に眺め、驚きより信じられないと言いたげだ。


「彼は神よりの使徒ですよ、このくらい朝飯前です。

 護衛に私が付けられている点で、彼の重要性は分かるでしょう。」


「なら本格的にマッサージをすれば、この病気は完治させることができるんだな。

 なら、続けて施術していこう。」


 治るのなら早く治してしまおう。

 アドリアネが暴れた後だし、騒がしくなってマッサージできなくなるかもしれない。

 


side ツバキ


「んんんんも………う……ううだあ…めぇ…えっ。」


 思わず吐息が漏れ出てしまう。

 口を噤もうにも、もはや力を入れることが自分の意志では叶わぬ。

 まっさーじとやらが始まって、まだ少ししか経っておらぬというのに…。


 真面目な顔でアタシの鼠蹊部を揉みしだいている、この男の価値を見誤っていた。

 外見的な美しさや腰の巨竜などでは判断しきれぬ、この真剣な眼差しからも分かるが、この男の本質は『尽す』こと。

 深く深く女を理解しているからこそ、その技はこんなにもアタシを悦ばせる。


「ちょぉ…っっ…とぉぉ…お!待…っ…!てぇぇぇぇ!、待!っ……て…ぇ…えぇ、駄目…」


 快楽も襲いくるが、それと共に未知の魔力が内側に侵食してくるのも感じる。

 それが、快楽に拍車をかけている。

 これはちょっと身体に悪いかもしれない、そう思わせるほどの甘い痺れ。

 中毒になっても、虜になってしまいそうじゃ。


「ちょぉ…っっ…とぉぉ…お!待…っ…!てぇぇぇぇ!、待!っ……て…ぇ…えぇ

 いいい…っくうっ!!

 いぃぃい…いぐ…ぅうっ!っ…!」


 はしたなく、盛大に果ててしまった。


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