第17話

side アドリアネ



 爬虫類ごときが、随分と立派な建物に篭って。

 有象無象を適当に固めてながら、綾人さんのいる場所へと進む。

 これも本人には言ってなかったが、本人位置は常に把握できている。

 これは能力ではなく、私がマークした人間の位置はだいたい把握できる。

 およそ屋敷の中央に反応がある、この信号を受信できている限りは、存命を意味しているので焦らない。

 ただ、身の安全が保証されているとは言えないので最短距離で来たまでです。


 洒落臭い。

 今までの結界は視認できないレベルでしたが、この結界は比にならない強度です。

 結界の強度が高かろうと、私にかかれば意味はないんですが。

 おそらくビンゴ、この部屋に綾人さんの反応を感じます。

 もう面倒くさいので、結界ごと扉を引きちぎります。


 中には綾人さん!と雑魚と爬虫類。

 ちょっと、そこの爬虫類は綾人さんとの距離が近すぎますね。

 放っておいても、世の女は彼を傷つけることなんてできないと分かっていましたが。

 確実に性的な意味で、捕食を試みられるのは間違いありませんでしたので。

 まさに女ホイホイですね、しかも劇薬入りの。


 あの爬虫類どこかで見た気がしますね。

 それよりも、あの右手から綾人さんの反応が濃く感じられます。

 ガキみたいな身なりで、よもや綾人さんにセクハラじみた蛮行に及んでないでしょうね。

 これは近くに行って確認すべきですね、そうしましょう。

 

 よく見たらこの竜、昔馴染みの娘ですか。

 顔見知りだからって、罰には容赦しませんけどね。



side A



アドリアネの表情は固まったまま、真っ直ぐこちらへ向かって来た。

 すると何かに気がついたようで、少し歩みのペースが早くなった。


「綾人さん、夜更けに相棒を置いて何してるんですか。

 夜道に綾人さんなんて、鴨がネギ背負って歩いているようなものですよ。」


 そう言って無言で手を握ってくる、


「なるほど。事情はだいたい理解しました。」


 手を握るだけで、説明不要なのは楽だ、触診しているだけと伝わってくれたようだし。


「ちょっと(大っきく)されたんですね。

分かりました、こいつ始末しましょうね。」


 怖い笑顔で、ツバキの頭を鷲掴みする

 待った待った、病気を治そうと考えているのに始末されては敵わない。


「冗談ですよ、天使ジョークです。

それに友人の子を、殺すなんてことしませんよ。」


 友人の子供というワードに、俺以上にツバキが反応する。


「お主!アタシの母様の殴り合っていたじゃないか!

それを友人などと嘯きよって…。」


「殴り合って確かめる友情もあるのですよ。

それに貴方の母は結界術の祖でしょう、殴っても簡単には死にません。」


 いろいろと物騒な言葉が飛び交うが、争いごとには発展しなさそう。


「ですが、躾は別です。」


 あれっ?


「綾人さんの股間を、無許可で弄った罪は反省してもらいます。」


 手を握ったことによって、罪状は明るみに出たようだった。

 遊びのない拳骨が、ツバキの脳天に落ちる。

 涙目で済んでいるところ、扉を千切るほどには力を入れていない様だ。


「それよりも、綾人さんもですよ。

護衛も連れずに歩かれるのは、褒められた事ではありません。」


 こちらには軽い小突きがくる。

 ツバキは私の時とは違うっ!と涙を浮かべながら唖然としていた。


「それでも、そんなに危険でもなかったと思うよ?

現にピンピンしてるしさ。」


 軽く戯けてみせるが、アドリアネの目線が冷たい。


「そういえば来る道中に、

白眼を剥いて舌を出して、盛大にお漏らししながら倒れている竜を見ましたが…。」


 そういえば、そんなこともあったな。

 うん、素直に反省します。

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