第15話
side ツバキ
本当に男だったとは。
しっかし近くで見るとまた随分と美しい、なんかいい匂いもする。
なんじゃこの男、完全に誘っておるじゃろ。
困惑してるフリして誘惑してきとるじゃろ。
もう目と鼻の先には、濡れた様な黒髪と混ざった赤毛が揺れておる。
鼻腔をくすぐる風呂上がりの匂いは、不思議と花と果物を思わせる。
あの姉妹も、こやつの色香に惑わされたか随分と熱っぽい視線を隠しきれてなかった。
その上でアタシに献上してくるところ、まだ村人たちの信仰は厚いようじゃ。
右手が先ほど握った竿の感触を忘れられず、ビリビリと妙な感覚を残しておる。
アタシの経験には、こんなに立派な竿を持っとる男はおらん。
皆の男が粗末な物を必死に勃て、泣きながら犯されるものじゃ。
アタシの人としての姿の見た目が幼いものじゃから、尊厳を蹂躙しながらの行為しか記憶に残っていない。
こやつの逸物、こいつは女を喜ばせる為だけのものではないな。
シルエットでわかる、この凶暴さが新たな世界を拓きうると。
未だに薄いズボンを膨らませる、常軌を逸した巨根。
あんなもので貫かれた日には、子を孕みたくて狂ってしまうかもしれん。
ペテン師ならば最初は少し脅してやれば、尻尾を巻いて逃げ出すと踏んでいたが。
どうやら本当にアタシの病を治す気のようじゃ、健気で愛いのう。
もったいないの、据え膳食わぬは女の恥とも言うし、もう箸はつけてしもうた。
生贄なんぞいらぬと、拒んできたが今回だけ後宮に迎えてもよいのでは。
いやそんな事よりも、先程からこやつの触れている部分がなんだか妙だ。
鱗に触れる手から胸へと、波動を感じる。
これが回復魔法の類いなら、感覚ではなく正確に分析できるが、それともまた違う。
「なにをしている?
もう、お主の技で施術しておるのか?」
そう聞くと、きょとんとした顔でアタシの眼を見つめる。
黒く大きな瞳は、まさに黒真珠か黒曜石か。
コレを所有するだけで、ひと財産作れそうな美術品のようじゃ、益々所有欲が湧いてくる。
物に無頓着なアタシが欲しがる唯一のもの、それは金銀財宝のコレクション。
それに加えられたら、いやもう加えよう。
「まだ触診の最中です、あまり動かれないよう。
いけませんよ、動かないで。
あと、あまり変なとこを触らないでください。」
誘いには乗ってこぬか…。
これでもアタシは、昔は結構遊んだものよ。
ウブなものほど前戯を長くしてやれば、自然と警戒心も薄れるもの。
しかし、こやつは表情を変えず真剣にアタシの患部へと触診を進める。
突然、館の扉が開け放たれる。
これはアタシの結界の、重要な範囲への侵入を警告する合図。
我が村には、このように無粋に扉を開け放つものはおらぬはずだが。
「姫様!館に賊が侵入した模様です!」
やれやれ、これから楽しくなるところなのに。
アタシの結界が弱まっていることは、アタシ自身がよく分かっている。
だがこの様に蜘蛛の巣を払い除けるように突破されては矜持が傷つくのお。
こんな芸当できるのは、アタシの姉妹の竜くらいなもの。
どうせ男日照りによる嫉妬で乗り込んできたか…。
「悪魔だっ!災厄が顕現しましたぞ!」
んっ?
悪魔だと?
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