第8話

 アドリアネの背中をマッサージしていたら、反応が薄くなってきたので寝たのだろう。

 毎度失神して寝付くのは健康に悪い気がする、本人的には大丈夫と言っているから、信じるしかない。


 今回はお酒も入っていたと言うこともあって軽めのマッサージにしたが効果的面。

 やはり天使族というのは、背中に翼がついているということで肩こりが酷い。

 そういえば昔、人が空を飛ぶためには胸筋が2メートル必要という話だったっけ。

 流石にアドリアネのバストは2メートルもないが、この豊満な胸は膝越しにも重力を感じさせる。

 こんな胸してれば普通の人でも肩こりしそうなものだが。

 というかこのバストでブラを付けていない、なのに型崩れしている様子はない。

 魔法の力でどうにかしているのか、魔法恐るべし…。


 間抜けな考察をしていたら姉妹が部屋にやってくる、


「寝床の準備が整いましたので、ご案内いたします。

 も•ち•ろ•ん 部屋は別にお取りしましたので、ご安心ください♪」


 目を細めた笑みが張り付いている、なんか怖い。

 正直言って、この世界の味方はアドリアネしかいない。

 アドリアネは俺のことを、便利なマッサージ機くらいに思ってるかもしれないが。

 アドリアネの相棒という言葉に、少しは救われているんだ。

 気の抜けた表情で、身体を預ける相棒の頭を軽く撫でる。


「綾人様には、就寝前に少し会っていただきたい方がおられます。」


 お姫様抱っこでアドリアネを移動していると、それを気に食わなそうに見つめながら姉妹は言う、


「この村において、1番偉い方になりますので挨拶をお願いします。

 また、この方が翼人が苦手で。

 なので綾人様1人でお付き添いください。」


 怪しい、もう怪しすぎて逆に信頼できるかもしれない。

 村にて1番偉いのは村長ではないようだ。

 おそらく竜姫と呼称される人物、それが今回紹介される。

 翼人が苦手ってのも方弁である可能性が高い、この世界で天使って余り一般的ではないのか?

 海で生活するものと、空で生活するものは天敵同士なのだろうか?

 悩んでいても仕方ない、これだけもてなしを受けて挨拶なしでは礼儀知らずと謗られる。

 アドリアネを布団へ寝かしつける、黙って外出するのは申し訳ないが仕方ない。

 さあさあと、促されるままに屋敷を出て行くが。

 無駄なトラブルが、大口を開けて待っている気がしてならない…。



side unknown


 村の周囲が騒ついている、こんなに賑やかなのは何時ぶりだろうか。

 館の前の大通りは、いつもより人通りが活発になってみえる。


 今日も今日とて体調が優れないが、召使い達はもう暫くの辛抱ですと励ましてくる。


 もう少ししたら何が来るのだ?

 新薬でも開発されたのだろうか、アタシの病にそこらの薬が効くとも思えないが。

 腕利きの医者も、アタシの症状を緩和することができなかった。


 それにもう、色々と試した後だ。

 ここ数日ならまだしも、もう何年も不調とは付き合っている。


 アタシはもう永くない。

 それはアタシ自身が1番理解しているつもりだ。

 心残りがあるとするなら、この村の行く末を共に見ることができないという点。

 アタシの可愛い子供たち。

 姉妹もずっと会えずにいる。

 考えれば、やりたい事だって限りなく出てくる。


 旅にも出たい。

 美味しいものだって食べたい。

 

 そして、恋だってしてみたい…。

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