第7話
この天使…。
隣でぐでんぐでんに酔っ払ったアドリアネは、どこから見つけてきたのか耳かきを用意して耳掃除を要求してきている。
「だからー。綾人さんが耳かきしてくれたら元気100倍なんですって。
これは、相棒特権ですよ♪」
意味のわからない口上、泥酔した者のよくある姿。
仕事柄見慣れているけれど、これ天使として許されるのだろうか。
ヘラ様どっかで見てるんじゃないか?
俺は手をつけていないけど、あの酒に何か混ざっているんではないか?
仕方なく膝枕に天使の頭を乗せ、
「わかりましたから、大人しくしておいてください。」
耳元で嗜めると、瞬間的に耳まで真っ赤になり、
「いやちょっと、やっぱりこれは早かった…。」
と、ワタワタなにやらチキりだしたので頭を押さえて物理的に静かにさせる。
抵抗は激しくなかったので、単なるポーズだったのだろう。
都合の良い展開すぎて、狼狽える姿は男子中学生の生まれ変わりなのか。
「まだ身体は繋がってますので、あまり失礼なことは考えないように。」
どうやら繋がっいるのは手以外でも意志は伝わるらしい。
顔が赤いままなのは、ちょっとだけ可愛いが。
「いま、プラスマイナスゼロで相殺されました。許します。」
鼻息荒く待機しているので、さっきから浴衣?のような服を突き抜けてくすぐったい。
絹糸のような銀色の髪をかき分けて、血色の良い耳に息を吹きかける。
それだけで鼻息は5割り増。
妹にやっていたのを思い出しながら、そういえばあの時も鼻息が荒かったのを思い出す、自分がされるときも妹に鼻息を意識させていたのかな。
そう考えると恥ずかしい気もする。
耳掃除といっても綺麗なものだ、というか掃除する意味があったのか?
「そりゃ私は天使ですから、老廃物なんて出ませんよ。
こういうのは相棒である私への報酬なのです。雰囲気ですよ。」
文字通りタダ働きというか、奉仕活動だった。
この世界の女性を幸せにする、その第一歩なのかもしれない。
sideレン
あの翼人…。
羨ましすぎる、なんてもの見せつけてくるんだ。
今日だけで奥歯が少し縮んだ気がする、そう思えるほど歯軋りが止まらない。
膝枕に耳掃除?しかも甘えまくってからに。
最初は護衛だから見逃していたが、ヤツはこの世の女を敵に回すことだけを考えて行動してるとしか思えない。
庭影から覗いている私たち姉妹に見せつけるように、表情が快楽に溺れている。
リツちゃんは気づいてないかもしれないけど、さっきから涎がでっぱなし。
その涎が私の頭に降ってきて、私の不快度は急上昇だし。
「あぁ!今度は反対を向いて男の股ぐらに顔を突っ込んでる!?
それはもう性交渉でしょ!人様の家でなにしてんのよ。」
声を荒げる姉を、口を塞いで止める。
確かに許されざる行為だけど、今気づかれるわけにはいかない。
これはあくまで泳がせている段階、夕飯も食べて、温泉にも浸かって、部屋でくつろいで。
もう少し経てば、昼間の再演が行われるのは誰が見ても明らか。
最終的に男がこちらのものになれば良い、だから今は我慢の時。
「動きだしたよ!」
急に真面目な顔で言うから、姉ながらどういう神経しているのか疑わしくなる。
あの体勢は!
まさに昼に見た情事の再現、つまり…。
天は我らに味方しているのかもしれない。
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