第4話
side 竜人
口にもだしたけど、すごい。
生きているうちに生男と話す機会があるなんて、昨日までのあたしなら信じられなかった奇跡だ。
しかも裸。
あられもなく上半身を披露している、両乳首セットで恥ずかしくないのか。
眼福であることは変わりないので、有り難く目に焼き付けておくとしよう。
どうしようか。
村では男を発見したら竜神様に奉納するのが習わしだけど、そんな事したらもう二度と話すことなんてないだろう。
なんなら少しくらいつまみ食いしてもバチは当たらないのでは?
レンと顔を見合わせると、恐らく同じことを考えているだろう鼻の下が伸びている。
いや敬愛する竜姫様に申し訳ない、普段から私たちを護るために仕事をしてくれているのだ。
しかも、つまみ食いといっても。
今までの人生で男と接触したことがないあたしに、そんな都合のいい雰囲気になれるだろうか。
いっそ襲ってしまおうか…!?
side A
目が困惑から覚悟が決まった視線になりつつある、商売柄であるが女性の表情の移り変わりは見慣れている。
これは不味い、そういえばこの世界で男は希少なんだっけ。
可愛い見た目でも、俺の姿は獲物にしか見えていないのか。
「さっき、そこの人といかがわしい事をしてたでしょ。
あたし、見たんだからね!」
どうやらマッサージの様子も見られていたようだ、けどマッサージだとは分かっていない様子。
「そうよね、絶対にいやらしい事してたよ。
言いふらされたくなきゃ、どうしたらいいか分かるよね?」
なんだか焦ってるのか?
まるで小学生が悪いことを見つかって糾弾されているシーンだ。
確かに見た目は中学生くらいの2人だが、もしかして性的な知識はもっと下なのか。
「うーん、説明するのも難しい状況だ。
あれは別にいやらしい行為ではなくてね。
けど実際は、このお姉さんは絶頂しちゃったんだけども…。」
「やっぱり、昼間っから破廉恥な!」
顔を赤らめるけど、目だけは爛々と期待を表している。
まいった、この世界にはマッサージというものが広まってないのかもしれない。
けど昼間から人気のない浜辺で、側からみれば男女の営みに見えるかもしれない。
俺はもしかして今からレイプされようとしているのか?中学生くらいの子供に?
「うるさいですね、気持ちよく寝ていたのに。」
アドリアネが砂浜から体を起こす。
これは珍しい、言ってはなんだけど俺のマッサージでノックダウンしたら半日は目を覚さないのが普通だ。
そこは流石天使と言わざるを得ない、とんでもない精神力の成せる技だ。
「その格好、海の民ですか。
うっかり、海の中までは存在を確認していませんでした。
綾人さん、ご覧ください竜の巫女の一族です。
あっちの世界ではいなかったでしょう。」
バスガイドみたいに手で示して説明するアドリアネ。
竜の巫女か、言われてみれば半袖から見える腕には薄らと鱗状の皮膚が輝く。
耳の辺りもヒレのようなものが太陽に透けている。
まさにファンタジーって見た目だ。
急に静かになったけれど。
竜の巫女たちは身動きひとつせず、アドリアネの方を見つめる。
「あぁ、もう喋ってもいいですよ。」
示していた手を下ろすと、巫女たちは大きく息を吐く。
「どうなってるの!?その人が起き上がった瞬間に喋ることも動くのもできなくなったよ!
現に今も、顔以外動かせないし!」
どうやらアドリアネの不思議な力で、その動きを封じられているようだ。
確かに武器を持ったまま自由にされると怖い。
「初対面で舐めたこと言ってるからです。
まるで、私たちが淫乱みたいに。
あれは列記とした医療行為です。」
頬を赤らめて言っているから、信憑性がとても薄い。
とにかく、とんでも異世界との初めての邂逅となったのだ。
いや空から降ってきたのも、よく考えたら突拍子もないな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます