幻の山 甲山(かぶとやま)
@windrain
幻の山 甲山(かぶとやま)
私は山の多い地方で育ったものですから、山を見て何かを感じるということはありませんでした。景色の一つに過ぎないという感覚ですね。
海辺で育った人とドライブしたときに、山の緑がきれいだ、形が面白いと言って、ずっとはしゃいでいました。
私はむしろ海が見える景色に憧れていたんですが、育った景色が違うと、こうも反応が異なるものなのですね。
そんな私にも、一つだけ気になる山がありました。
奥羽山脈の中に、秋田県と岩手県の間に広がる和賀連峰、あるいは和賀山塊と呼ばれる、「和賀岳」を中心とした山の連なりがあり、その中に「甲山(かぶとやま)」または「曲甲(まがりかぶと)」と呼ばれる異様な山があります。標高1,013メートルの山です。
しかし「甲山」だけでネット検索すると、兵庫県西宮市にある甲山がヒットしてしまいます。ですから、「和賀岳」などと併せて複数で検索した方が確実です。
私は1980年代に、和賀連峰の一つである「薬師岳」のふもとの町の町民登山に参加し、薬師岳経由で和賀岳まで登りました。
そのとき、薬師岳に登る途中で振り返ると、甲山が見えました。それはとても異様な姿でした。
山頂が尖っていて、さらにグニャリと曲がっている、見たことがない形でした。
ちょうど北アルプスの「槍ヶ岳」の先端を曲げたような感じでしょうか。
どうやら山の一部が崩落して、あのようなグニャリと曲がったように見える姿になったらしいです。
残念なことに、その日私はカメラを持って行くのを忘れました。そのことを今に至るまで後悔することになるとは、そのときは思ってもみなかったのです。
なぜなら、インターネットの普及により様々な情報を得ることができるようになった今でも、私が見たのと同じ場所から撮った写真は見当たらないからです。
それでも、今の時代は便利なツールがあるものです。パソコンで地図を見ることができ、ストリートビューや立体地形まで見ることができるのですから。
まず地図ですが、Yahoo! Japanの地図では「甲山」の表記があり、その位置が確認できます。私が登った薬師岳と和賀岳の南側にあります。
一方、Google マップでは山の名前の表記はありません。Yahoo! マップと見比べて、等高線を頼りに探せば何とか見つかります。
ストリートビューで見ると、真木真昼県立自然公園ルートが結構奥深くまで伸びています。
それをたどっていくと、両側が林になっていて木が邪魔で山が見えなかったり、山は見えても、ふもとからだと奥の山の頂上が見えなかったりで、残念ながら甲山の姿は確認できませんでした。
秋田県側の国道105号線から、甲山らしき山の頂上部分が見えるポイントが何カ所かあるんですが、ストリートビューでは山脈があまりに遠景過ぎて、やはり判別できません。
105号線より東の、山に近い道路では、山脈に近すぎて手前の山の陰に隠れてしまいます。
Google Earth でも見ましたが、やはりどれが甲山なのかわかりません。Google Earth の場合、実際の標高より扁平な表示になってしまうようなので、なおさらわかりにくいです。
単体の山ならばすぐに見つかるのでしょうが、山脈というのは文字どおり山が連なっていますので、その連なりの中ほどの山は、よほど高くなければ山脈の外からは見つけられません。
まさに「幻の山」。なぜ私はこの山にこんなに惹かれるのでしょうか?自分でもよくわかりません。
もしかしたら、「初恋の人は、今どうしているだろうか?」という気持ちに近いのかもしれませんね。
もう一度「薬師岳」に登ってみればいいじゃないか。カメラを忘れないようにして(スマホでも良い)、天候が悪くならなければ、今度こそ決定的写真が撮れるだろう・・・それはわかっています。
しかし、たかが標高1,217メートルの山の途中までであっても、今の私の年齢と足の状態では到底登れません。
だから、遠い日に見た幻の山・甲山の異様な雄姿を求めて、今も私はインターネットの旅にときどき出かけてしまうのです。
おわり
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色々なサイトで甲山の写真を見ることができますが、こちらのサイトでは山麓から見上げる甲山の写真を見ることができます。
↓
https://sites.google.com/a/meizan-hitoritabi.com/hitoritabi03/2-2b-magarikabuto-131019
見る場所によっては、山頂は丸く見えたりするようです。
このサイトの最後の写真が、私の見たイメージに近い感じです。
↓
http://www.yamagaido.com/blog_waga-jyusou_20-3.html
また、こちらのサイトでは、甲山の山頂に登って撮った写真を見ることができます。
↓
https://yamap.com/activities/4777352
私が北側から見たのと違い、東側から上っているのと、濃霧のためによく見えなかったのが残念ですが、行程も山頂も藪だらけだったようです。
※近況ノートに、出所不明の甲山の画像をアップします。
↓
https://kakuyomu.jp/users/windrain/news/16817330648859904342
幻の山 甲山(かぶとやま) @windrain
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