第14話 魔女が白馬の王子様をざまぁした日
村にとって最悪の一夜が明けた。唯一の救いは村人が閉じ込められた蚕小屋が面白半分で火を放たなかったことと言わなければならないほど、他は滅茶苦茶にされていた。
普段は隠さなければならない人間の醜い部分を思う存分開放して凌辱の限りを尽くし、兵士たちは見張り含めて気持ち良く寝入っていた。
既に数名は、永遠に。
「殿下! 失礼いたします!」
「何事だ、騒々しい」
ノックもなしに飛び込んできた副官に叩き起こされ、ストレチアはガウンだけ羽織って起き上がる。
女は死んだように眠ったままだ。
「とにかく外を! 原因は不明ですが恐らくはあの女にしてやられました!」
「あの女だと……?」
眠たげだった目が、窓から外をうかがった刹那に見開かれる。
「これは!?」
自分が見たものを信じられず外へと飛び出すと、村長の家の裏の草原には異様な光景が広がっていた。
朝露に濡れた瑞々しい緑の中、あちらに一頭、こちらに一頭と立派な体躯の軍馬が転がっている。
あるものは四つ足を空に向けて痙攣させ、あるものは口から泡を吹き白目をむいていた。
懸命に立とうともがいているが下半身が完全にマヒして立ち上がれないでいるのは王子の白馬だ。
馬の数を確認に行っていた兵士が戻ってきた。
「畏れながら申し上げます! ……っ、全滅! 全滅です!」
一周回って冷静になっているのは副官もストレチアも同じだった。
「馬番は? 見張り兵はどうした」
「下半身を露出した状態で、喉を切られておりました!」
「殿下!」
「今度は何だ」
「女たちがおりません!」
「蚕小屋にも誰一人いません!」
ひとつだけでも信じられない報告が次々ともたらされる。
「……まさか!」
寝室へ取って返すと王妃によく似た女もおらず、ベッドはもぬけの殻だった。
「……魔女だ……」
どこからともなくそんなざわめきが風に乗って聞こえてくる。
「これは魔女の呪いだ……」
「ガルデニアの王妃は本物の魔女だったんだ!」
「とんでもない相手に戦争を仕掛けてしまったんじゃあねえか……?」
不気味なざわめきと沈黙が交互に支配する中、次に聞こえてきたのは軍馬の蹄音、槍や鎧の鳴る音、勇壮なブラスバンドで奏でられるガルデニアの国家。
草原の向こうから楽団を引き連れて厳かに進軍して来るのは、剣と農具を白い花が取り巻いたガルデニアの旗を掲げた正規軍だった。
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読んでくれてありがとうございました!
動物が酷か目に遭っとっとは絶対ダメという方にはごめんなさいでした。
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