第12話 ゲス王子、配下のモラルもたかが知れている
まだ日も暮れはいないうちだというのに、男たちの下品な笑い声と女たちの悲鳴やすすり泣きが村を満たしている。
馬番と見張り兵は革袋から酒をかっ食らい不貞腐れていた。
「ちぇっ! ついてねえなあ! ローテが良けりゃ俺たちも女を食い放題だったってのによう!」
「帝都にだってちょっといない美人がゴロゴロいやがる。どういうことなんだよ、ガルデニア万歳!」
「おいおい、シケた面晒してんなあ」
「お前どこ行ってた、またサボりやがって!」
「怒るなよ、いい土産を持ってきたんだからよ」
サボり魔の兵士の後ろから、おさげ髪の娘がおずおずと顔を覗かせた。腕にチーズや干し肉を入れたバスケットをかけ、大きなワインの瓶を抱えている。
「ヒャッハー! こいつはいいや!」
「田舎には今時こーんな素朴そのものって娘がいるんだなあ。しかも顔が可愛い」
「ど……、どうぞ……召し上がって、ください……」
震えながらも健気に笑みを浮かべ食料やワインを配る娘を、馬番が乱暴に呼びつけた。
「おい小娘!」
「はいっ!」
「村長の家の向こうに広がってる草っぱら、ありゃ何だ。放牧地か? 見たとこ馬も羊もいねえようだが」
「馬の放牧地です……。今は、出稼ぎに行ってる男の人たちが……乗ってっちゃってるので、いないんです」
「オオカミやクマは? 水は?」
「オオカミは、冬になって獲物が少なくなると来ます……けど、この時期に出るのは猪ぐらいです……、お水は、丘の下の方に小川が。崖の方とか危ないところには、馬が近づかないように、柵があります。む、村の馬たちは、夏の間はずっと放し飼いです……」
「ほーん」
馬番はそれを聞くなり立ち上がって、繋がれていた馬を次々に引き出し始めた。
「どうするんだよ?」
「放牧するに決まってるだろ。こんな日に馬のお世話なんてしてられるかっつーの。これから先のために飼い葉も節約してえしな」
「余った分を売り飛ばしてピンハネする気だろ」
「何が悪い、役得だろ」
遠くには行かず、朝には帰ってくるよう良く訓練されている軍馬たちだ。
解き放たれた駿馬たちは夕焼けに染まる広々とした草原へと、たちまち駆け去って行った。
ところどころに、ピンクや白の可憐な花が落ちている。
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読んでくれてありがとうございました!
王子軍ば強かとですが、風紀はガタガタです。
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